専門学校卒業後、地元を離れ一人暮らしを始めた。
実家にいた時も、両親が共働きだったので、家事を手伝うことはあったけれど、やりたくないときは学校や部活や勉強を言い訳に逃げることがいくらでもできた。

だけど一人暮らしとなると逃げることはできない。
自分がやらなければ代わりに家事をしてくれる人はいない。

掃除、洗濯、炊事。毎日1人でこなさなければならない。しかも1日8時間以上働いた後に。
そんなこと私に本当にできるのだろうか……。

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上京する前、そんな不安に襲われ、一人暮らしをするのが少しだけ嫌になった。
実家にいたときはとにかく早く家を出たくて仕方がなかったのに、いざ現実が近づいてくるとなんだか怖くなってきた。だけどそんな不安があったのは最初だけだった。

実際一人暮らしをしてみればなるようにしかならず、結構すぐに一人暮らしに慣れることができた。

まず、家事を毎日完璧にこなす。
そんなことは私にできるわけはなかった。

しかし、一人暮らしということは、家事をする人も、そこで生活をする人も私しかいないということ。部屋が汚くたって、食器や服が足りなくなったって困るのは私だけ。部屋を汚すのも、食器を使ったのも、服を着たのも私だけ。

一人暮らしを始めて割とすぐに、自分の中で頑張れるときは頑張る。どうしてもやりたくない日は何もしない。とバランスをとって生活できるようになった。

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その時から、私にとって家事は、やりたい時にやる。必要になったらやる。そんな距離感のものになった。

あまり好きだと思えていなかった家事というものと上手に距離を取ることができるようになってから、汚れたもの達が綺麗になったとき、爽快感や達成感を感じられるようになり、家事を少しだけ楽しく思えるようになった。

掃除や洗濯と比べて少しだけ料理が好きだった私は、節約も兼ねて1週間分の献立を先に考えて、材料をまとめて買う生活を始めた。

その日のコンディションで、うまく1週間の予定を達成できないこともあったけれど、1週間を上手に暮らせたときはより嬉しさもあった。

そんな、何となく家事と良い距離感を保つことのできていた一人暮らしは家庭の事情で1年で終了し、兄との2人暮らしが始まったが、どうやら兄と家事への考え方が近かったようで、1人の頃と変わらず同じような距離感を保ったまま、どちらかができる時にやる。やりたくないときはやらない、とぼんやり良いバランスのまま暮らすことができていた。

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しかし、年前家庭の事情で母が私と兄の2人暮らしに合流し、3人暮らしが始まった。

ほぼワンオペで、朝から晩まで働きながら私と兄を育てた母は、私と兄の家事との距離感には共感してくれず、いつの間にか母が家事をこなしてくれる機会は増えてしまったが、大人の3人暮らしということで、ある程度は自分のことは自分でという生活のルールもあったので、やはりそれなりの距離感のまま、できる時にやるスタイルで今も家事と向き合うことができている。

そして、来年、私たち家族はそれぞれ別々の生活を始める予定になっている。

それに伴い約年ぶりの人暮らしが始まる。
困ったって、誰も助けてくれない生活が始まる。

だけど、私は今まで築いてきた家事との距離感を保ちながらこれからも上手に生きていきたいと思う。