かがみよかがみにて、3回目の募集となる『クリスマスの思い出』というテーマ。私は毎年書こうと思うが結局書けないでいる。なぜなら、22歳になった私にとってのクリスマスは、気づいたら終わっているイベントの1つだからだ。思い出と言われても特段なにも思い浮かばない。

実家にいたころは、母が毎年ケーキとチキンを用意してくれていた。実家でのクリスマスをエッセイに綴ろうかと思いもしたが、ハプニングが起きる訳でもないし、話にオチがある訳でもない。本当に日常の一部だった。

そして、実家を出るとクリスマスだからといって特別なことをしようと思う気力がないまま日々が過ぎていく。金銭的にも、時間的にも、体力的にも、余力がない。改めて「母は偉大だ」と実感する。

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こうして何もせず過ぎていくイベントは、クリスマスだけではない。お月見だって、実家にいたころは団子や白玉が食卓に並んでいた。だが今は、いつの間にかお月見は終わっていて、気づけばスーパーのPOPがハロウィン模様に変っている。

そして、ハロウィンも、実家にいたころは、カボチャサラダが食卓に並び、小袋のお菓子をシェアしていた。しかし今では、ハロウィンも知らぬ間に終わっており、気づけば街がクリスマスムードになっている。

「イベントごとを取り入れなくても、まあいっか。子供がいる訳じゃないし」と、最近まで私は思っていた。むしろ、「イベントごとに振り回されない方が楽でいいよね」とまで思っていた。

そんな私だったが、10月に入り、「やっぱり、今年からちゃんと季節のイベントをちゃんとしよう!」と、心変わりした。そのきっかけは、あるドラマをテレビで見たことだ。

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きっかけとなったドラマは、テレ東系列で放送されている『きのう何食べた?』という作品。このドラマは、男性同士のカップルの日常を描いた作品で、特に料理のシーンに力を入れていて、魅力的なレシピが毎話紹介される。

2019年にseason1が放送されていた。お正月スペシャルや劇場版を挟み、今年、2023年の10月からseason2の放送が開始された。私は、season1から見ていたので、season2ももちろん視聴することに。そして、season2を見始めると、2019年にseason1を見ていたときとは少し違う印象を持っていた。

その理由は、ドラマの方向性が変わったとか、ドラマの雰囲気が変わったとかではない。season1もseason2も登場人物たちの微妙な距離感の変化はあるものの同じコンセプトだと私は感じている。だったら、なぜ抱く感情が変わったのか。理由は私自身にあった。この4年の間に、私自身が変わっていたのだ。

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2019年のseason1を見ていたとき、私は一人暮らしをしていた。だから、ドラマの主人公たちの同棲生活に共感をすることができなかった。二人の関係性や紹介されるレシピを他人事のように見ていた。それが2023年の今、私はパートナーと二人暮らしをしている。

この変化によって、登場人物たちの、日常のやり取りや、相手に思うことなど、共感できるようになっていた。そして、この作品の登場人物たちが、季節のイベントを大切にする姿に、「こういうのって素敵だな。私もこうありたいな」と思うようになった。

『きのう何食べた?』という作品において、クリスマスは重要なシーンだと私は感じている。毎年クリスマスを迎え、年を重ねるごとに少しずつクリスマスの過ごし方が変化していく様子が描かれている。少しずつ変化していくことも含めて、二人の間でクリスマスという共通の文化ができているように感じる。私もこんな風に、パートナーと共通の文化を築いていきたいと、この作品を見て思うようになった。

だから、今年の12月はクリスマスを意識して生活してみようと思う。そして、他の季節のイベントも大切にしていこうと思う。