クリスマスは不思議なくらいにカップルであふれかえる。どこにいってもカップルだらけで、ひとりでいる人を見つけるのが難しいほど、二人一組で歩いている人たち。今から数年前の12月、私が街に出て実際に感じたことを書いてみよう。

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12月に入ると、街はクリスマスに向けてきらびやかな装飾がされる。イルミネーションやクリスマスツリーが設置され、店に入ればBGMはクリスマスに関連した楽曲。何年も聞いていれば、曲自体を知らなくても口ずさめてしまうくらい定番の曲が次々と流れてくる。

普段から一人で行動することが多い私。12月でも、クリスマスというイベントがあっても誰かと一緒にいることは少ない。この日もいつもと変わらず、一人でショッピングモールを歩いていた。

近くでクリスマスマーケットが開かれていたので、近くに来たこともあり、除いてみることにした。思えば、これまでにクリスマスマーケットへ行ったことはなく、人生で初めてのクリスマスマーケットだった。どのようなものなのか、足を伸ばした。

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会場の中心に大きなクリスマスツリーがそびえ立ち、周りには、会場の形を作っているかのようにテントがある。クリスマスにちなんだフードやアクセサリーなどを売っている店が連なっているのだ。その場所へ行くには、ゲートをくぐらなくてはいけない。

しかしそこへ行くには入場料が必要だった。さすがにそこまでして偵察する勇気はなかったので、ゲートの隙間から会場をちらっと見て終わることにした。

クリスマスマーケットの中に入らなかったのにはもうひとつ理由がある。それは、会場の中がカップルでいっぱいだったからだ。見かける人、中にはいっていく人すべてがカップル。

当然私のような独り身が入っていったところで、違和感にしかならない。世のカップルはこれほど数が多いのか、と感心してしまうほどの数だ。クリスマスマーケットの会場内は程よく人で埋まっていた。クリスマス本番を目前に控えた時期だったので、たくさん人がいるのは納得である。それにしても、少しも一人で楽しんでいる人や女性だけ、男性だけの組み合わせがいないのには驚いた。

私が確認できていないだけで、実はいたのかもしれない。とはいえ、そこにいるペアはおそらく友達以上の関係であろう。普段一人で行動することに何も感じない私でさえ、怯んでしまうほどカップルしかいなかった。

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ここまでカップルしかいないのにはさすがに笑えてきた。自分がどれだけ場違いな存在なのかを思い知った。ショッピングモールのあった場所は、観光地にもなっているくらい有名な場所であったことも関係しているだろう。時間も、19時くらいの夜で、ライトアップもきれいにされていた。当然カップルたちがやってきそうな時間と場所だ。足を伸ばした時間と場所が悪かったらしい。

一人でいても、クリスマスというイベントがあることに変わりはない。楽しんでもバチは当たらないはずだ。なのにここまで一人でいる人が少ないとは。何も予定がないのなら、仕事で時間を潰すのが一番良いのだろうか。それとも必死になって隣にいてくれる人を見つけたら良いのか。クリスマスの時期だけは、必ず二人組を作らなければいけないルールでもあるかのように、カップルであふれていた。

この光景に圧倒された私は、踵を返して駅方面へと急いだ。こういうときに限って、駅までの道のりがとても遠く感じた。来るときは周りを眺めながら楽しんでいたはずなのに、帰りはできるだけ周りを見ないように目線を下へ向け、早足になっていた。競歩でもできそうなくらいに。

あのときの光景は、トラウマやカルチャーショックを受けたときのようにこびりついている。“一人でクリスマスマーケットには近づくな”と、教訓に似たような感覚で胸に刻まれていることでもある。

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数年前にクリスマスマーケットで目の当たりにした、カップルしかいない夜は、クリスマスの時期になると蘇ってくる思い出だ。決して嫌な思い出というわけではない。ただ、圧倒されて、クリスマスの力の強さを知った1日だった、という思い出だ。