「うちは毎年父の実家に集まって過ごすので…」。
夫が私の両親に大みそかの予定を話している。
それが俺の家の伝統。これからも続いていく家族行事。
そう信じて疑わないような話しぶりだ。
いや、今後はどうかな?
今はまだ表立っては言わないが、私はそれを壊してやろうと考えている。
◎ ◎
おととしの大みそかは散々だった。
義理の実家に集合したのが15時、それから集まる親戚分の買い出しに付き合わされようやく義祖父母の家に着いたのが17時。
18時に夕食を食べ始めて21時には帰れるかと思ったら、この家は違うらしい。
夜中までだらだらぎゃーぎゃー過ごして年を越す頃になって帰り支度をはじめ、年越しは帰りの車内。
おじさんたちが格闘技を見ていたので紅白歌合戦も見れない。
親戚には気を遣い休みなのに休んだ気がしない。
彼の親戚はみんな声が大きいので、同じ空間にいるだけで疲れて果ててしまった。
そして気の毒に義伯父の嫁さんは大みそかの間ほとんど座らずに食事の準備や後片付けをしていた。
「何か手伝わせてください」
「これからははるちゃんの番だから休んでていいよ」
これがこの家の長男の嫁の扱いか…。
◎ ◎
孫ではあるものの長男の夫と結婚した身としては、将来の自分の姿を見ているようでゾッとした。
「夫が新幹線の運転士をしているので年末年始はフル出勤で帰れません~」
「授乳もしてますし、娘の人見知りが激しく私以外に抱かれると爆泣きなので~」
「私達が行くと○○おばさんの負担が増えて申し訳ないです~」
言い訳はたくさん考えてある。
そんなに行きたくないの?と言われるかもしれないけど、行きたくないものは行きたくない。
良く知らないおじさんたちの大騒ぎに付き合うのも、娘が人見知りをして大泣きするのも、長時間拘束されるのも、年末の理想的な過ごし方とは言えない。
◎ ◎
彼のシフトはまだ確定ではないが、年末の休みは28日のみ。
その次の休みは年明けだ。
「うちも旦那が年末年始泊まり勤務だったから実家帰る~」
同じ社宅に住むママ友の同期と「年末年始赤ちゃんと二人は気が狂う」だの「転勤で名古屋についてきてやったんだから帰らせろ」だの愚痴を言う。
大みそかは好きなテレビを見た後ゆく年くる年を見て、次の日はのんびり起きて、少し落ち着いた頃に初詣に行く。
私の大みそかと彼らの大みそかは時間の流れが違うのだ。
◎ ◎
「名古屋から27日に帰って1泊して、28日の夕方私の実家に帰ります。」
「あ、そうなんだ。」
義実家の反応はあっさりしたものだった。
もしかしたら陰で何か言われているかもしれない。
本家に集まらないことで日本の家族の形が壊れてしまうかもしれない。
お義祖母ちゃんは悲しがっているかもしれない。
だがしかし。
そんなことはこの際どうでもいい。
大みそかに一人台所に立ち続けるおばさんのため、娘に「女性は年末も親戚の世話をするのが当たり前」と思わせないため、何より自分のために、私は実家に帰る。