デジタルデトックスという言葉がある。
スマホやパソコンなどの電子機器に触らない時間を設けることで、ストレスを和らげる取り組みのことだ。
私はこれまで、意図的にデジタルデトックスをしようと思ったことはない。しかし、結果としてそうなってしまったことは何度もある。ストレスは和らぐどころか、蓄積していく一方だったけれど。
私は、かなり頻繁にスマホを失くす。
家から出るとき、ショッピングの合間、飲食店を出た後。ポケットやカバンに入っていたはずのスマホが、見当たらなくなる。大抵はポーチや紙袋の中に入っていたりして、すぐに見つかる。けれど10回に1回くらいは、本当に失くしている。そうなると、強制的にデジタルデトックス期間に突入させられる。
以前、飲み会の帰りに、地下鉄のトイレに置き忘れて帰ったとき。翌朝に家電で駅へと連絡すると、既に中央駅にある忘れ物センターに送ったと言われた。しかしまだ輸送中で、受け取りに行けるのは17時以降とのこと。元々置き忘れた駅は自宅の最寄りの2つ先で、そこに取りにいくだけならすぐに行けたのに。なんとも悔しかったが、そもそも100パーセント自分が悪いので、仕方ない。結局私は、半日ほどデジタルデトックスする羽目になった。
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ちなみに、失くすのはスマホだけではない。財布、定期券、家や自転車の鍵、保険証、免許証、学生証……ありとあらゆるものを紛失してきた。
先に述べた地下鉄のトイレの時は、場所を思い出せたからまだ良い。どこで失くしたのか思い出せないまま、見つけられなかったものもたくさんある。
よく、母から「最後に見かけたときから現在までの行動を思い返しなさい」と言われてきた。そうすれば絶対思い当たるはずだから、と。
言われる度に思った。「そりゃ、思い出せるならそうだろうさ」と。
思い出せないのだ。何か考えごとをしていると、それ以外への注意がシャットダウンされてしまう。それなら考えごとをやめたらいいじゃないか、と思われるかもしれないが、それもできない。気づいたら始まってしまって、止まらないのだ。その間は、自分のしている動きなのに、記憶に刻まれない。
あと、よく充電がなくなる。外にいるときに、充電器を持っていない状態で。「少なくなる」のではなく、「なくなる」のだ。完全に0パーセントになる。
「寝る前に充電しておけばいいじゃん」とか、「モバイル充電器を持ち歩きなよ」とか、よく言われる。非常にその通りなのだが、それができないのが私なのだ。週の半分くらいは寝落ちするから、ケーブルを繋ぐことが出来ない。モバイル充電器は、カバンに入れたはずなのにいつの間にかなくなっている。入ったままになっていたとしても、大抵は、それ自体の充電がない。なので、充電切れによってもデトックス期間に突入してしまうのだ。自分の意思とは関係なく。
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こんな日々、もううんざりだ。しかしきっと、私が私である限り、逃れることは出来ない。
これほどうっかりばかりしていては、私自身が社会からデトックスされそうだ。そうならないように、気を張って生きていくしかない。
……なんて書きながら、きっと明日も何かを探し回っているのだろうけど。