私は、出張で全国各地に行く。なかでも、思い出に残っているのが、熊本県上天草市での朝ごはん。露天風呂付きの民宿に泊まり、朝は海の見える部屋でお手製、漁師飯の朝ごはんがでてくる。

季節がちょうど真夏だったのもあり、どこまでも続く藍色の海を目の前に、サンサンとした太陽の光が窓に入ってくる。明るい陽の光をあびながら、美味しい白米にイカなど新鮮なお刺身を朝から食べられる。なんて、贅沢で活力のわく朝なんだ!と開放感を感じたのを覚えている。なんとなく海の青さといい、普段食べられない漁師飯といい、都会の喧騒を離れ、なんだか子供の頃にやった「僕の夏休み」というゲームの世界を思い出した。

そんな、全国出張で食べた朝ごはんの中で、いちばん印象的な場所だ。

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一方、プライベートで忘れられない朝ごはんもある。

一つは、北海道南富良野町を旅した時の朝ごはんだ。富良野の山奥にある隠れたゲストハウスに泊まった。そこで食べた朝ご飯や朝ごはんの時間が、現実と思えないほど贅沢なものだった。

建物は温もりを感じる木造のおしゃれな古民家で、ベランダがあり、そこを出ると、辺り一面が緑の芝生で、遠くに十勝岳が見える。朝食は、温かい雰囲気のおしゃれな屋内で食べるか、ベランダにでても食べられる。

秋晴れの季節だったので、私は上着を羽織って、外のベンチで食べた。10月だというのに、目の前の山は雪化粧姿で、さすが北海道の秋だと思った。 

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まだ朝焼けの時間でもあり、朝食を食べながら、暖色カーテンのように段々と空が明るくなっていく景色にも惹かれた。

提供されたのは、富良野メロンや、マスターお手製の野菜サンドイッチ。どれも優しい味で、また、目の前の視界を遮るものがなく、時折鳥のさえずりを聴きながら、ほんとうに自然の森の奥でのっぺり進む時間を堪能できた。これは、ここでしか味わえない大人の贅沢な時間。

雄大な自然に囲まれ、優しい味の食べ物を頬張った、忘れられない優雅な朝食の時間だ。

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もう一つは、当時付き合っていた彼の家に初めて泊まった時に一緒に作った朝ごはんだ。

初めて彼の家にいったので、お互い少し恥じらいがあった。ただ、一晩中、お互いのこれまで、未来のことなど話し合っていたから、より近付けた気がする。そんな朝、いつもより少し早く起きて朝ごはんを一緒に作った。

メニュー自体は、とてもシンプルで、目玉焼きと卵焼き、それからコーンスープと食パントースト。ただ、2人で同じキッチンに立って、役割分担しながら作るのが、なんとも特別な時間だった。「この時が、このままいつまでも続いてほしい」。そんなことを思いながら、2人で朝食を作り、テーブルに腰掛け、2人で見つめ合いながら日曜の朝に食事をした。 

忙しない日常の中で、癒される幸福な時間だった。

そんなこんなで、仕事でもプライベートでも、思い出に残る朝ごはんはある。