逆ナンパ のような要領で、男性に声をかけたことがある。もちろん繁華街で、全くの見知らぬ人というわけではない。

ある会社の同期に電車の中で会い、懐かしさのあまり声をかけた。5年半ぶりだった。彼に今声をかけなければ、後悔をするという直感があったのだ。

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私の最寄り駅に着くまで、社会人1年目の私たちが出会った頃の話の思い出の話をした。その時はそのまま別れたが、その日の夜、勢いそのままに彼にさっき電車であって驚いたとメッセージを送り、良かったらご飯に行かないかと誘った。

彼はすぐに返事をくれ、約3週間後に二人で飲みに行く約束をした。飲みに行く日を決めること、場所を決めること全てスムーズで、思いやりを感じた。

その日から約束までの3週間の間に彼を合計2回見掛けた。この5年半の間 全く会うことがなかったのに この短期間で3回会うということに、運命を感じてしまった。この恋が後押しされていると思った。

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飲み会の約束の日、電車で会った時と同じ、いやそれ以上に彼はかっこよかった。この5年半の間何をしていたのか どんな人と仲がいいのか どんな仕事をしているのか 何でも話した。 そしてそれから休日何をしているのか聞いた。妻や彼女の話は出なかった。

そこで私たちは2回目の飲みに行く約束をした。この前、飲みに行ったのが日曜日だったので 、今度は金曜日か土曜日の次の日休みの日にしたいねという話になった。お互いに用事があり、候補日は少なかった。それから約1ヶ月後の金曜日の会社の帰りに飲みに行く約束をした。

ところが2週間経った後、彼からメッセージが来た。お店の場所を決めたすぐ後だった。彼が予約してくれるという約束までしていた。どう考えても2人で行く 約束だったのに彼から来たメッセージは、他に誰を誘う?であった。

あまり共通の友人はいないし、2人で行くものだと思っていたと正直に返そうとしたところ、追加のメッセージが来た。彼女がいるから2人ではいけない。彼女に勘違いさせたくないとのことだった。私は、それならこの約束はなかったことにしようと送った。私の短い恋は終わった。

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最初に約束していた日の帰り道、私は残業をして帰った。帰り道は一人だったので、いつもの出口の近い乗り口へと移動した。なんとなく隣の乗り口を見た。そこには彼がいた。飲み会に遅刻して参加するには遅い9時台。解散するには時間が早い上、周りには職場の人と思わしき人はいない。

今はインフルエンザも流行っているので、忘年会自体が延期されたのかもしれない。色々と心の中で彼を守ろうと、飲み会に彼が行っていない言い訳を考えた。嘘をついてまで、私との予定をクリスマスの後に延期したかったのかと思ったが、もう考えないことにした。

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この短い恋から学んだことは何だろう。いいなと思った人がいたらまずは左手の薬指を見て、それから彼女がいるかどうか尋ねる。アラサーには、そうやって自分が傷つかないように、自分で自分を守ることも大切だと思った。