付き合って4年目に突入した。周りからはベテラン、運命、ラブラブ、もう結婚まっしぐらなんて言われる。さぞや素敵な出会いをしたのだろう。大学で最近になって付き合っている人がいることを知った同級生のみんなには馴れ初めを聞かれる。
でも、そんな時私は「いつもなんて答えようか」と言葉を選ばざるを得ない。なぜならば、私は彼が告白してくれるほんの数秒前まで6割方ごめんなさいと答えるつもりでいたのだから。それなのに、いざ言われて首を縦に振ってしまったのは、ほぼ直感だった。
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当時、私にはどうしても新しい恋愛へ進むことができなかった。受験を1年後に控えた不安もあったが、それ以上に好きで仕方なかったのに喧嘩することもできずに自然消滅してしまった初めての彼氏のことが忘れられなかったのだ。とらえどころのない不思議なオーラと、いざという時はしっかり者で頼りになる所が格好良かった。未練たらたらの自分が嫌になった。
でも、私とその人が付き合っていたことは私の親友の他には誰も知らなかった。だから、学園祭の準備をしている中で私への好意がバレバレな今の彼への冷やかしと私とくっつけようとするムードは、学園祭という非日常的な高揚感と共にみんなを盛り上げていった。準備期間は安易にお手洗いにもいけないほどだった。女子しかいないその空間ではみんなに取り囲まれ、「彼のことどう思ってるの?」、「なつめちゃんも好きなの?」、「まだ告白されてないん?」と質問攻めにされてしまうからだ。
別にそういう高校生らしい、青春らしい一コマが嫌だったわけじゃない。ただ、なんて答えたらいいか分からなかった。初恋の彼のことが忘れられない。でも忘れないといけないのも分かってる。今私を好きと言ってくれている子も良い人なのは分かるけど、ただ準備を一緒にする頼れる仲間という感じだ。こんな中途半端な気持ちで付き合っていいのか。でも中途半端な大義名分を立てて私は逃げようとしているだけじゃないのか。そんなこと言って、実はまだ復縁の希望を捨てられないからそんなこと考えるんじゃないか。色んな想いが錯綜して、本当に自分のことが分からなかった。
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結局、どっちつかずのまま学園祭がおわった。片付けを終えて2人で一緒に帰る電車の中、ふと彼が言った。
「今まで一緒に頑張ってきたし、来週あたり、2人で打ち上げがてらどっかいかない?」
ああ、絶対告白される。分かってた。私はそれにどうこたえるかまだ決めてない。脈ナシならここで断るのがいいのかな。でも。結局、断らなければいけない理由と、断り文句も思いつかず首を縦に振った。
「あいつと付き合ってるの?」
付き合い始めてすぐ、別れてからお互い避けるようになってしまった元彼が、帰り道で私に話しかけてきた。わざわざ、それを聞くために。
そんなこと言われたらまた、期待してしまうのに。何回もやっぱり付き合わなければよかったのかなと悩んだ。好きだと言われるたび何度も、これがあの人だったらよかったのにと思ってしまった。何度も堂々巡りの同じことを考えて、でもこれしかなかった、前に進むんだと蓋をして、3年が経って、もうあんまり思わなくなった。
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私が強くなったわけじゃない。今の彼のおかげだ。いつもストレートに想いを伝えてくれる。何を考えてるか分からなくて不安なんて全くない。分かりやすすぎて笑ってしまうほどだ。そんなところが、いいなと思う。
ああ、そういえば、告白の言葉もストレートだった。「俺と付き合ってください」だった。私さえいれば幸せでいてくれるんじゃないかと思うくらい、まっすぐな目でそう言ってくれたんだった。彼の笑顔を見て思う。たくさん悩んだけど、直感を信じて良かったのかもしれないな、と。