私が20数年間の中で今でも思い出す朝ごはんは、祖母が作ってくれた具沢山豚汁がメインのごはんだ。
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私の祖母は本当に料理が上手で、住んでいる地域が田舎だったからか味は濃く、自分では到底真似できない、ごはんが何杯でも食べられるおかずを作ってくれていた。私だったらスーパーで購入する梅干しや、漬物も、すべて自分で漬けて、自分で楽しむ梅酒も作っていた。祖母が元気に梅酒を仕込めていた時の私は幼すぎたし、大人になってからもお酒は飲めなくて、そのころには祖母は、もう自分で梅酒をつけることはしなくなっていたから、ついぞその味を知ることはなかった。でも、黄金色に輝くそのお酒は、とてもおいしそうで、いつか飲んでみたいと子供のころから思っていた。また、祖母が炊くご飯ですら、なぜか家と違った味に思えて、実家よりも祖母の家のほうがはるかにご飯をたくさん食べていた(いつもはお茶碗に軽く1杯だったけれど、祖母の家に行くと、2,3杯は食べていた気がする)。
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朝は実家と違って和食がメインで、たまにパンの時もあるけれど、基本的には昨日の残り物が次の日の朝に出てきていた。その中でも、一番おいしかったのは、人参、玉ねぎ、サツマイモ、ゴボウの入った具沢山豚汁がメインの朝ごはんだった。土曜日の夜に作ってくれて、朝ごはんの時には前日よりもサツマイモが溶けて、味噌汁の汁のとろみと甘みが増し、ちょっと行儀がよくないけれど、ごはんにかけて食べると最高においしかった。祖母はそんな私を見て、笑顔でたくさん食べて偉いねえと言ってくれて、調子に乗って本当にたくさん食べていた。
祖母にこの豚汁おいしいからいっぱい作って!といったからか、冬にはこの豚汁がよく食卓に。私はこのご飯が食べたくて、冬は毎週といっていいほど祖母の家に行った。ごはんも食べて、おかずもたくさん食べて、私は小さい時が一番ぷっくりしていたけれど、それでもこのおいしいごはんを祖母と一緒に食べられて、何をしても怒られない(母は娘の私にしっかり社会で生きていけるために、マナーにはちょっと厳しかった)ので、毎週末が私の大事な時間だった。
思えば祖母との記憶は、ご飯にまつわるものが多いかもしれない。今ではなんで作ったのかな?と思うくらいだが、卵とじのおじやを、食パンの上にのせてチーズをかけて焼いて食べるなんて不思議な朝ごはんを発明したのも、祖母と一緒にご飯を食べていた時だった。
おじやも味がちょっと濃くて、ピザパンのようにするとおいしいかなーなんて話して、作って食べたら、(今思えば罪悪感の塊でしかない)絶品B級グルメだった。
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こういった素敵なごはんを作ってくれていた祖母は亡くなり、私は今一人暮らしをしている。朝ごはんは起きる時間によって食べたり食べなかったりで、昨日の残りもののこともあれば、手軽なシリアルバーという時もある。いつもギリギリの生活をしているので、着替える、化粧するが、第一にすることで、朝食を食べるなんてことは二の次になっている。土日だって疲れてしまっていて、パンを食べるだけでも「偉いぞ私」とほめているくらいだ。1人で暮らしていると、食がおろそかになる。シリアルで済ますこともあれば、お菓子で済ますときもある。野菜なんてほとんど食べなくなって、炭水化物しか1日食べないなんて日もある。
でも、最近祖母の何周忌目かの集まりがあり、祖母のことを家族と話す機会があった。「やっぱりおばあちゃんのご飯はおいしかったね」なんて話していた。祖母は亡くなってしまっていて、彼女のご飯はもう食べられないけれど、祖母のことを思い出しながら、また、祖母が作ってくれた豚汁や、罪悪感の塊のトーストを作ることができたらな……と思う。