「いい人いないですかね」

クリスマスの昼下がり、出産を1ヶ月後に控えた1つ上の先輩に、私は思わずこうこぼしていた。

約7年付き合った彼氏と別れてもうすぐ1年。結婚を見据えたパートナーがそろそろ欲しい。ライフステージの先を行く先輩を目の前に、その気持ちがより強まった。

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素敵な人や尊敬する人はたくさんいる。ただ、その中で「より踏み込んだ関係性になりたい人はいるか」と考えると、首を傾げてうんと悩んでしまう。こうして悩んだまま解決することなく、再び「いい人いないですかね」と呟いてしまうのだ。

ところで、「いい人いないですかね」と言う自分は大変情けない。まるで「いい人は待てば現れる」と思っているような受け身の姿勢と、あくまで私は「選ぶ側」でいるスタンス。

私はどうして、仕事は積極的に自分から掴みにいくのに、「いい人」は掴みにいかないのだろう。マッチングアプリ始めようかな。

今年のクリスマスが終わりに近づく頃、私はマッチングアプリをダウンロードした。

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今までマッチングアプリを拒んでいた理由はいくつかある。ひとつは、その人を知る最初の情報が「顔」だからだ。もちろん写真や名前以外にも、その人に対する情報はたくさん載っている。「一人の時間も大事」「真剣な出会いを求めてます」など、価値観がわかる工夫もされている。

ただ、やはり最初に「もっとその人の情報を知りたいか」判断する決め手は顔なのだ。

もうひとつは、実際に会うまでのやり取りが面倒なことだ。マッチングアプリでは、マッチングした後メッセージのやり取りを経て、会うことができる。自己紹介をして簡単な会話をして、お互い会う意思があるか確認してから日程を調整して……。考えるだけでどっと疲れる。

私はこれから、「顔」が一次情報で「面倒なやり取りが発生する」マッチングアプリを始める。笑顔が映えた自分の顔写真を登録してもなお、マッチングアプリに対する負のイメージは払拭できなかった。出身地、血液型、趣味、結婚の意思。ひとつひとつ答えては、「これらが共通する人は果たして本当に『いい人』なのだろうか」と考えるし、私のこれらの情報を画面の向こうで誰かが見定めると思うと、妙な気持ち悪さと緊張感があった。

けれど、やる前から足踏みしてもしょうがない。何も行動せずただ「いい人待ち」の自分の方がよっぽど嫌だった。

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マッチングアプリを始めてまだ2週間しか経っていないが、わずかな期間でもさまざまな教訓があった。

まず、画面の向こうの人は平気でメッセージを無視する。多数の女性のうちのひとりにカウントされているからか、あるいはメッセージの雰囲気が合わないと判断したのか、一方通行のチャットが何件も積み重なっている。

そして、一度した約束を守らない。お互いにメッセージを重ねて会う日時まで決めたのに、いつの間にかアプリから消えた人がいる。また、一度決めた日時がリスケになったので、「日程改めて決めましょう!」と送ったにも関わらず音沙汰なしの人もいる。こういう人たちは本当にパートナーを見つける気があるのか甚だ疑問だが、すでに新しいパートナーを見つけた可能性もある。後者なら良かったと思うし、前者ならアプリをめればいいと思う。

2024年に始めたいい人探しは早くも難航しているし、友人が勧めてくれた結婚相談所の方がいいかもしれないと思い始めている。けれど、マッチングアプリを通じてこれから会う予定の人もいるので(また知らない間に消えなければいいが……)、まずはこの与えられたフィールドで一度頑張ってみる。

「いい人いないですかね」は昨年で卒業。今年、いい人は自分で掴みにいく。