4年付き合っている彼との結婚の話が進むのは、当たり前だと思っていた。

なのに、わたしはずっと引っかかっている。
いまが幸せじゃないとは言わない。

だって、くだらない話ができて、好きなお酒を飲んで、行きたいカフェや場所に一緒に行って。好きなことをお互い大切にして過ごしている。全然幸せじゃないか。

ただ、スキンシップはほぼなかった。4年付き合っても片手くらいの数しかしていないし、それが不満で年に1回はわたしが限界になって話し合いにもなっている。

最後までしなくても、触れあいだけでもよかった。同棲を始めたら解決するかと思いきや、わたしから抱きついても、とうとう軽くあしらわれるようになってしまった。二人でいるのに寂しい。生活を共にしているだけ。わたしはここにいるのはなんでだろう。そんな疑問も持ちたくなる。

そんなときに職場で出逢ったのが、いまの恋人だった。

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「綺麗な目してるな」。

それが彼の第一印象。クールな感じかと思いきや、話すとノリが良くて、笑顔が人懐っこくて、見た目に反して声が低めなのがどタイプ。

気になる人になるのは、時間の問題だった。さすがに相手がいるわたしは、彼のことを推しとしてみよう。そう決意した。

でも、神様はとても意地悪だ。

休憩時間が被ることが多かったり、締め作業が被って話したりと短期間でともにする時間が長かった。彼に気に入られてるってことは自覚していたけど、はっきりとはわからないし、いまを楽しむことに頭をシフトさせていたわたしはずるい。

たくさん話すと、彼の印象がまた変わる。いま観てるドラマ。どんな恋愛をしていたのか。年下だけど、しっかり自分の考えを持っていたり、人の感情に敏感だったり。そんな他愛もない話の中で、いいなと勝手に思った言葉があった。

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「好きな人はなんもしないで、いてくれたらいいですよ」。

そんな人生めちゃくちゃいいな。彼女になったら幸せじゃん。そう頭によぎってしまった。

なにせ同棲している彼は、彼女にもやってほしいタイプだった。それがわたしにはしんどくて、家に帰る気持ちが重くなるばかり。妻が怖くて家に帰りたくない夫の気持ちがわかってしまう未婚女子ってどうなんだろう。

彼と接して行くうちに、気づいてしまった。ずっと引っかかっていた疑問に。

「わたし、本当に結婚したいの？」

もうすぐ30歳になるから、年も年だし結婚しないとなという気持ちがどこかにあった。自分が結婚したいわけではなく、世間体を気にして結婚をしようとしていた。それを自覚してしまったら、もう無理。わたしはもう彼を愛してはいなかったんだと思う。自分の気持ちを見て見ぬふりをして、ずっと別れる理由を探してただけだ。

その後、同棲している彼に別れたいと告げ、いろいろ話し合いをして関係に終止符を打つことになる。

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彼に出逢わなかったら今頃わたしは、バツがついていたと思う。

それくらい、同棲生活は苦痛でしかなかったから。もちろん、相手だけが悪いわけではなく、わたしが悪いところもあったし。甘えていた部分はあったと思う。自分から同棲をしたい、一緒にいたいって思えるくらいじゃないと人と暮らすなんて無理だ。

「年下なんて合わない」「同棲したいとか思えない」「ずっと一緒にいたいとか無理」「愛情を毎日伝えるとかできない」そんなひねくれたわたしの考えに対して。

「年の差なんて気にしない」「何してても可愛い」「どんなさとみも好きだよ」「毎日愛情伝えるからね」

わたしの価値観や固定観念をぜーんぶ変えてくれたのが、彼。

いまじゃ毎日精一杯愛したいと思うし、なにかあったときは力になりたいし、ときには思いっきり甘えたいし甘えてほしいと思う。ツンツンデレくらいのわたしがデレデレに変わるくらい対等な関係で、尊敬もできる彼の恋人になれて、心から幸せです。