帰宅後、いつものようにノートPCを開く。スマホは充電が切れそうだから、とりあえずSNSを開こう。そして、使用しているSNSのうちの1つをブラウザ上に開く。
あれ、いつもの青い鳥がいない。その代わりに、白と黒の細長い平行四辺形が重なった”X”のロゴが青い鳥の場所を陣取っていた。ついに、青い鳥との別れが来た。
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2023年7月、世界中の人々、特に多くの日本人が使用しているSNSであるTwitterのブランド名が”X”に変更される、というニュースが流れた。私を含め、多くのツイッタラーに衝撃を与えた。
宣伝や広報から、ぼそっとした独り言まで、何でもつぶやけるSNS。控えめだけど、秘めたる感情を誰かに伝えたい日本人にはピッタリのSNSだろう。前述にもあるように、Twitterを使用する人「ツイッタラー」やTwitterのヘビーユーザー「ツイ廃」など、Twitterをもじった新語も(少なくとも、私の周りでは)浸透している。
青い鳥を見るだけで、「何か呟こうか」と考えてしまう。それほど、Twitterのある生活が当たり前だった。
私がTwitterアカウントを開設してから、約10年が経過した。義務教育よりも長い期間使用してたSNSの名称が変わってしまうことは、寂しいものがある。名称が変わるだけで、従来の機能は大きく変わらないはずなのだが、慣れるまでに時間がかかるだろう。
現に、PCのブラウザでツイッターを開いた時に現れる”X”のロゴが、ホームボタンやアイコンとして現れると、複雑な感情を抱いてしまう。せめて、Twitterカラー(?)の水色を採用してくれたら少しは早く馴染めるかもしれないのに……。
一方、私のスマホにはまだ青い鳥がいる。単純に、アプリをアップデートしていないためだ。現状のスマホで使う分には何の違和感もない。しかし、いずれは利便性やセキュリティを考慮してアップデートしなければならない。その前に、Twitterと過ごした10年間の思い出を少しだけ語らせてほしい。
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Twitterのアカウントを開設したきっかけは、大学進学だ。同じ学部の同期や新歓で声をかけてくれた先輩たちは決まってこう聞くのだ。
「Twitterやってる?」
当時SNSすらよく分かっていなかったが、学生生活のコミュニケーションにおいて必須のツールだと認識した私は、とりあえずアプリをインストールし、アカウント開設した。身の回りの学生と相互フォローし、いい感じの投稿には「いいね」をした。
しかし、当初は鍵をかけていなかった(非公開設定にしていなかった)ため、知らない人からのいいねやコメントを受け取ることが多くなった。「私のプライベートが世界中にダダ漏れではないか」とようやく認識し、半年経過してようやく鍵をかけた。
大学教員のTwitter使用率も高かった。教員が授業スライドに「フォローしていいよ」とさりげなくアカウント名を載せることも珍しくなかった。むしろ、Twitterを授業で使う教員もおり、授業の連絡や質問受付の投稿をしていた。教壇に立ち、研究指導をする表の顔と、Twitter上の顔が全く違う先生もいるから面白い。
アカウントを変更したり、用途に応じて複数のアカウントを所有していた時期もあった。プライベート用、前向きな発言を心掛けた自己研鑽用、サークルに所属していた時はサークルアカウントの管理をしていた。自己研鑽用のアカウントを使っていた頃は、ビジネス書やインフルエンサーのキラキラした影響を受け、便乗して自分の意見を発信していた気がする。しかし、キラキラに段々と疲れていき、自分の本当の意志を見失ってしまった。最終的にこのアカウントは削除し、現在はプライベート用のみ使用している。
職場の美術館でもTwitterを使った広報を一部担当している。限られた文字数や画像数でどれだけフォロワーの関心を引けるか、客観的に考えることを心掛けている。どの資料を見せたらウケがいいか、どのように配置したら見た目が洗練されるか、考えながら画像を編集するのが最近の楽しみだ。
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まだまだ語り足りないが、Twitterを通してネット上でのコミュニケーションや情報倫理など、多くのことを学び、経験してきた。投稿がネガティブだった時期があったこと、Twitter閲覧だけで1日の大部分を潰してしまったことなど、反省点も多々ある。それでも、現代を生きる1人として、Twitterを使用していることは意義があることだと思う。
Twitterが完全に”X"になっても、私はこれまでと同様にSNSとして使うのだろうか?運営者の意向で機能が大きく変わるかもしれない。
このタイミングでジブリ最新作が公開されたのも、何かの伏線かと感じてしまう。青い鳥の世代交代なのかもしれない。
Xといえば、数学やプログラミングの変数としてよく使われるアルファベットだが、これまでと同じ気持ちで使えるだろうか。やや理系脳で元ツイ廃の私は、方程式にXを使わなくなるかもしれないし、グラフのX軸や微分積分の公式で多用されているXに気を取られるかもしれない。
いずれにせよ、この先、新しくなったSNSとどう生きるか、考えるきっかけになるだろう。そんな今日も、ネット世界とリアル世界を模索しながら過ごしている。