私には発達障がいがある。
この国の豊かな福祉制度を利用しながら、B型就労支援施設でドーナツを作って販売に行っている。
福祉の方々の支援を受けながら社会との接点を持って働かせて貰える、障がい者にとっての貴重な活動の場所だ。
受給者証を市役所で発行してもらい、2カ所見学に行ったのち作業内容と施設長の雰囲気が好きな場所に決めた。
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まだ入って1ヶ月目。仕事は慣れないことも多いが優しく丁寧に教えてくださるスタッフの方のおかげで少しずつ作業に慣れてきたところ。
利用者の方も穏やかな方が多くて、自分にとっては向いている場所だなと思う。
週に3日間、曜日を決めて通っている。それ以外の日は家で料理をしたり文章を書いたり運動をしたり、つい最近できた恋人と会ったりと人間として充実した日々を送らせてもらっているなと思う。
いつかやってくる自立に向けて、自分に優しくするとは何なのか?を生活を通して学んでいる最中でもある。
私が通っているのはホースセラピーをやっている施設で、休み時間にはお馬さんに餌をあげたりして愛でることができる。
他の利用者の方とみかんをあげたら、お馬さんは喜んでいたのかよだれをたくさん垂らしながらペロリと平らげた。
お馬さんと接しているとトゲトゲのウニみたいな心が少し丸くなるような気がするから癒される。
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そして、この施設でスタッフとして働いている2つ年下の子がよく私の元に来てくれて、自分と好きなアイドルや誕生月などに共通点があって話が盛り上がる。
自己肯定感が低い私は、なぜこの人は私の元に来るんだろう?と思ってモジモジとしていた。
その子は「一緒にいて楽しいからなんか来たくなるんだよね」と言ってくれて、凍った心をお湯で溶かしてくれるような感覚がした。
そういえば小学生の時も中学生の時もそうだった。
忘れていた記憶がジワリと滲むインクのように、脳裏に浮かんできた。
いつも授業と授業の合間の10分間の休み時間になると、女の子たちがやってきて私のペンケースの中身をかき回していった。
私は「なぜだろう?」と思ったが好きにさせておこうと思い、何も喋らずじっと待っていたのを思い出す。
彼女たちは気が済むと自分の席に戻っていったが、今思えば言葉などいらないノンバーバルコミュニケーションの一環に過ぎなかったのだと、時を経て腑に落ちた。
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きっと話したかったんだ。私は言葉ばかり達者で非言語的なコミュニケーションがどうも苦手だ。だから障がいなのだろうけれど、そこで人とすれ違いが起きていたのだろう。
だからここに来て相手の意図を汲み取ることの練習をかなりさせてもらっているなと思う。
あと、蛇足だがペンケースや下敷きを好きなようにその時の気分で取っ替え引っ替えしていたので物を大切に扱っていない姿勢が良くなかったな〜と思い出し、今後もそういう自分の性質に気をつけようと思った。
社会とは足りない部分を補いあい歩み寄る場所で、気分や感情で動く場ではないということにこの歳になってようやく気付いた。
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この施設で働かせてもらってから、たくさんの気付きと働く喜びを貰った。
人生、タワー・オブ・テラーのように下半身がヒュンとするようなUP&DOWNを繰り返してきたし、その性質は完全に消えることなく、これからも大なり小なりあることだろう。
でもなるべく、PUSH&PULL精神でいると波立つことなく平穏な日常を過ごせるのかもしれない。
自分という人間を内観してみると、かなりカウンター精神を持っているということに気付いた。
それは天邪鬼であるということと同義なのだろう。
小さい頃からアンパンマンとバイキンマンではバイキンマンの方が好きで、よくバイキンマンのテーマを聴いていた。ロールパンナにも憧れていた。
ドーナツ販売に向かう時は、なるべくアンパンマンのような爽やかな笑顔と発声と愛嬌を心がけていきたい。