20代の間でお酒との距離感は大きく変化した。どうせ飲むなら楽しく飲もう。

飲み会に行くことや飲みの席で気分が乗らなさそうな時は、潔く断ろう。相手に断られたら「そっか。じゃあまたね」とサラッと切り替えよう。そんなマインドに変化した。
大学時代、何かつけて部活やゼミ、プライベートで「ご飯行こう」と言い出す。もれなくアルコールもセットに組み込まれていた。入学後すぐに受けたアルコールパッチテストで、腕に何も反応が出ず「お酒に強い」ことが証明されてしまった私。誘われるがままホイホイと、いくつものご飯会という名の飲み会に顔を出した。

就職してからも3年くらいは、公私さまざまな飲み会に顔を出した。

職場では歓迎会、送別会、忘年会、お疲れ様会。「上手く立ち振る舞おう」と義務感を感じつつ、作り笑顔を貼り付けながら上司や先輩にお酌をして回った。

プライベートでは相変わらず大学や高校の同級生と定期的に会っていた。忘年会、新年会、GW、夏休み期間。

「せっかく誘ってもらったから」「次いつ会えるか分からないから」と理由をつけて、何度も残業終わりにダッシュで駆け付けた。翌日も若干の倦怠感は感じつつ、いつも通りに出勤し仕事に打ち込んでいた。今思うとめちゃくちゃタフだなと思う。

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コロナ禍で外出自粛が呼びかけられると、飲み会自体が無くなった。

その間に私は20代前半から20代後半になり、お酒に対しての耐性もめっきり弱くなってしまった。数か月に1回、家で缶チューハイ1本けるのがやっとだ。以前のようにビール、カクテル、梅酒、焼酎と次々に何種類も飲めない。

2022年末の忘年会。梅田の居酒屋に1年ぶりに大学の同期と集まったときのこと。

私は梅酒1杯をチビチビ、超スローペースで飲みながら、内心みんながどれくらい飲むのかうかがっていた。途中で気分悪くなったり、翌日に疲れや酔いを引きずったりしないか。この場を楽しく終えられるか。頭の中は一気に忙しくなった。
少し後になって1人が遅れてやってきた。コートをハンガーに掛けながら彼女は「私、いま妊婦やから飲まれへんわー」とサラッと言い放った。「えー!!そうなん!?おめでとう」と祝福の言葉が飛び交う。ソフトドリンクを注文した彼女は以前から大人っぽかったが、さらに大人に感じた。

一連のやりとりを目の当たりにした私は、こんな風に年齢を重ねて人はライフスタイルが少しずつ変わっていくのだと実感した。

石橋を叩いて渡るようにうつむいて忍び足でいたのが、パッと新しい景色が広がって背筋が伸びたような気持ちだった。忘年会の半ばからは気にせずに、ソフトドリンクをどんどん頼んだ。

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数か月後、何となくYouTubeの動画を見ていた時に某ビール会社の広告が目に止まった。「飲めなくてもええねん」「飲むならそれもええねん」「100パー笑えばええねん」キャッチーな歌詞とポップなメロディー。そうやんな、と共感した。

飲むか飲まないか。本来は自分自身で決めて良くて、誰にも強制されない。その人が決断したことが尊重されて居心地よく過ごせる飲み会が、当たり前に浸透したらいいのにと思った。

つい2日前、「明日の夜ヒマ?」と親しい先輩から連絡が来た。私の他に2人誘っているらしい。行けなくもないが金銭的にちょっと厳しいのと、前もって予定を立てたい私にとって急すぎる誘いだったので断った。

おしゃべりはしたかったので、タイミングを見計らってビデオ通話をかけてみた。たった数分だけれど、それぞれの近況が分かり十分満足だった。

もうお酒は楽しい時にしか飲まない。ちょっとでも心に引っ掛かることがあるなら、遠慮せずに断る。自分も周りも楽しく居られる空間や時間を大切にしたい。