かつていわゆる“ダメンズ”と付き合っていた私は、別れ際に彼から「俺、リサのおかげで“リサナイズ”されたわ」と言われたことがある。

それは聞こえ方によれば、私がモラハラをしていたかのよう。

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実際、その彼とは価値観が真反対で「それはこうじゃない?ああじゃない?」と私の価値観を押し付けすぎたことは今になって反省している。

しかし、彼にとってデメリットばかりではなく、周りの女友達に話しても「別れた彼と次に付き合う子は、リサのおかげで彼が気を回せるようになってるから感謝してほしいよね」と言ってくれるほど、「彼女側の要求」を伝えてきたつもりだ。

例えば「前の彼女は生理痛そんな重くなかった」なんて無神経なことを言われた時は「人によって生理痛がある人もない人も居るとよ!」と言ったり。

「電車で座ったズボンでベッドに腰掛けないでほしい」とか、「トイレはちゃんと流したの確認してから出てほしい」とかそういった衛生面に関する要求を伝えてきた。

付き合っていた当時は何度伝えても忘れてしまう彼にうんざりしたものだったのだが、“リサナイズ”されたと本人が言うのだから、私の話が伝わってはいたのだと思う。

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先日とあるオンラインミーティングに参加したのだが、「ミーティングは主催者の自己満足で開催されることが多い」ということに気付かされるほどのものだった。

主催者が自己満足な内容を鼻息を荒げて一方的に話していることにうんざり。

私には全く関係ない話としか思えず、ビデオオフのミーティングをいいことに、私はそのミーティングをラジオ代わりにスマホでパズルゲームをしていたほど。

ミーティング中に私のように違うことをしている人も少なくないはず。

以前知人はパソコンでインスタグラムを別タブで開いて、インスタグラムを見ているくせに難しい顔をしながら、ビデオオンになっているオンラインミーティングに参加していたこともある。

ミーティングが終わった頃に「なんだったんだ、あの時間」と思うのは、パートナー同士の要求に似たものがあるように感じる。

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ここでは分かりやすくするために、パートナー同士の要求にミーティングの一件をなぞらえて、対立構造を「彼氏」はミーティングの参加者、「彼女」はミーティングの主催者で表そうと思う。

「あの時こうしてほしかった!」という彼女側の要求は、「彼氏側の要求」にお伺いを立てていないのだから、ある意味彼女側の自己満足のように思う。

よく「彼氏にこう言ったのに改善してくれない」という話を耳にするし、冒頭で触れたように私自身もそんな体験をしたことがあるが、なぜ彼らが改善しないかというと、「なんだったんだ、あの時間」という他人事になっているからだろう。

それならば、他人事にならないようにするにはどうしたらいいのか、これを機に考えてみた。

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自分の要求を伝えたりミーティングを開催する前に、彼女や主催者側はあらかじめ相手である彼氏や参加者に「普段思っていること」を準備しといてもらうほうがいいのではないだろうか。

要望に限らず、話が一方通行だと聴く側は他人事になってしまい、「なんだったんだ、あの時間」となってしまうから。

スマホがあればSNSでの発信はほとんどが一方通行でできている。

しかし、スマホがある便利な時代だからこそ、顔を合わせて互いの意見を持ち寄り、傾聴し合うことが大事だと気付くことができた、現代社会ならではの出来事だった。