私は神様や神社に対してあまり肯定も否定も興味もないのもあって、リアルなお守りなどを買ったことがない。だから、これを持っていたら大丈夫!というお守りスタンスの考えを「もの」に対して自分で念じることがあんまりない。あ、でもさすがに受験前ギリギリの瞬間は、神様どうか……と神頼みはしたな。
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「もの」はない分、私は「行動」と「言葉」をお守りにする。
行動はルーティンとも言えるけど、私は赤リップを塗ることがお守りみたいなものになっている。基本的に私は何年も同じものを使う。ブランドも色もたぶんここ5年は変えていないと思う。あるとき他の色も使ってみたことはあったけど、とりあえず赤じゃないとダメで、気分がそわそわしてしまうことを知った。しかも高校の時から私は赤リップを選んでいた。だからもう10年は赤しか使っていない。私にとってはそれが普通だけど、今改めて考えると、こんなにリップの色が豊富にある世の中で決まったブランドの赤しか使わないというのは、なかなかにこだわりが強いと言えるのではないか。
家を出る前、基本的に日焼け止めを塗って軽くしかメイクはしないが、その最後に赤リップを塗ると、気持ちが上を向く。はい完璧、今日も可愛い、さあ行こうという気分になれる。
私はあまりつけないが、香水をよくつける人だったら、香水をつけてその香りをまとうことがお守りになる人の感覚に、私の赤リップを塗る感覚は近いだろう。魔法みたいなものだ。
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行動でもう一つお守りになるのは、音楽を聴くこと。例えば少しドキドキして緊張する場所に赴く前には、無敵のアイドルソングを聞いたり、意中の彼を落としに行く前には、無敵のアイドルソングを聞いたり、聞きすぎだけど、自分を上げるためのおまじないに近い。
そういえば前に夜の六本木の街を、一人で散歩していた時があって、少し怖いかなと思っていたけどノリノリの音楽を聴きながら歩いていたら、すんごく楽しくて、たぶん堂々と歩いていたから、変な人にも声をかけられずに済んだ。自分が思い込むって結構大事だなと。
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次に言葉、もうそれはたくさんある。偉人の言葉、好きな作家さんの小説の引用、好きなアーティストの歌詞、漫画のキャラクターのセリフ、そして何気ない友達の一言。
特に私は文学系の人間なので、長く生きれば生きるほど、作品に触れれば触れるほど言葉を手にしていく喜びがある。カレンダーを選ぶ時も、毎月一言キャラクターが言ってくれる卓上カレンダーなどを好んで選んで買ったりする。
あと私には、曲を聴いて「ああ、会社辞めよう」と決心できた経験もある。言葉の力は絶大だなとそのとき感じたのを覚えている。
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ミスチルのAnyという曲の歌詞をライブで私は聴いて、自分でも少し引くくらい涙が出てきて、置かれた環境で苦しみ続けるのはもうやめて、自分が笑顔でいられる場所をまた探しに行こうと思うことができた。今でもAnyの歌詞は私のお守りになっていて、同じ歌詞でも、そのときの私の思うことそれぞれを肯定してくれるような存在になっている。
言葉のお守りは、挙げればたぶんきりがないほどある。一人の夜、壊れそうな心のそばにいてくれる言葉、日常のなかで怒りや納得できない感情に押し流されそうになったとき、自分を見失わないように繋ぎ止めてくれる言葉、思い出したら胸がキュンとする最愛の人がくれた言葉、どれもが私の大事なお守りだと思う。思うと同時に自分の言葉も誰かにとって、お守りになるようなものになっていたらいいなと願う。