東北に住む母方の祖父は、私と血の繋がった実の祖母と「方向性の違い」というバンドのような理由で別れた後に、違う女性と再婚した。

相手もバツイチで子供がいて、お互いに再婚同士だった。 

祖母は私が5歳の時に癌で他界している。

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祖母が亡くなる少し前に、父と母に連れられて祖父の元へ遊びに行った。祖父は街中にマンションを購入して住んでいた。

そこで初めて血の繋がらない、義理の祖母と会うことになった。

当時の印象は、色白でスラッとして背が高かったので「綺麗で冷たい」感じがした。

なにで覚えたのか忘れてしまったけれど、私は離婚という言葉を覚えていて、悪気もなく「ねえ、なんで離婚したのー?」と幾度となく聞いて一瞬場をシーンとさせてしまったという記憶が微かにある。

とは言え子供の言う事なので笑い話になった。

毎年夏と冬の長期休みに泊まりに行くと、義理の祖母は最初の「冷たい」印象とは違い、優しく温かく迎えてくれた。

実の孫ではないのにとても愛情を注いでくれ可愛がってくれて、行く度に好きになっていた。

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祖母は料理が上手で、特に素材の味を活かした自然派なものが得意だ。

泊まりに行った時の朝食には手作りの漬け物(ラッキョウ、キュウリ、カブ)やとろっとろの甘い卵焼き、焼き加減のちょうどいい鮭の塩焼き、甘酸っぱくて新鮮な梅ジュース等を出してくれる。

東北で米どころなので、お米も美味しい。

私は祖母の作るハンバーグが大好きで、行くといつも夕食に作ってくれる。「喜ぶから」とたくさん作ってくれるので、次の日の朝食にも出るのだけれど、昨晩食べた時よりも味がしみていて柔らかさが増している。

ひき肉をミキサーで細かくしてあり、油は控えめ。ソースは手作りでほんのりブランデーの香りがする。

家で真似をして作ろうと思ってもなかなかこの美味しさは再現できない。レシピ通りに作ってもなんだか違うのだ。

「作る人の性格によるのかしら」なんて考えたりもしたが、きっとこれは愛の味なのだと思う。

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祖母が作るから美味しい。祖母の気持ちがこもっているから美味しい。

いつもそんな贅沢な朝食を食べながらテレビを見て、他愛もない話をする時間が幸せだ。

祖母がハマっている将棋のスマホゲームの話、祖父と2人で参加した地域のグラウンドゴルフ大会で優勝した話、今栽培している野菜の苗の成長の話etc…。

時代や世間の喧騒とはかけ離れた、のほほんとした会話に癒される。

ダイニングには、祖母が趣味で作ったパッチワークの壁掛けが飾られている。横幅が2mほどあり、マグカップが数十個縫い付けられていて一つ一つの布の柄が違う。

原色を見事に使いこなした色使いで、存在感とセンスに溢れている。それを褒めると全力で否定するところが可愛い。

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祖母は現在74歳。後期高齢者も目前なのに、変わらず若々しさを保っている。スラッとした印象は変わらない。卓球にゴルフに畑に、日々忙しくしているという。

血の繋がりがない孫にもたっぷりの愛情を注いでくれる祖母。なかなか簡単なことではないと思う。

もし私が祖母の立場になったら、どうなんだろう?

可愛がれるのだろうか。分からない。

今年の冬も祖父母に会いに行く。

先日電話した時には「最近2人とも物忘れが激しくてさ〜」と嘆いていたので、「見た目は若くても老いはやってきているんだよな」と当たり前のことを感じた。

あと何度朝食を共にできるのか、数えたくもない勘定をしてしまう。