私の視界をひろげたもの、それはダンスとその周りの環境だ。私は、幼少期からストリートダンスや新体操、チアダンスなどの様々なダンスに触れてきた。今は大学でサークルの一員としてダンスを続けている。これまで、ダンスを通して人と関わり、成長してきた。そして、「今」の私へと視界を開けさせたのは、間違いなくサークルである。
◎ ◎
高校でチアダンスをしていた私は、大学でも当然チアを続けるものだと思っていた。結論としては、高校卒業後の4月に入ってすぐにOGチームに入り、所属していた約半年間の間で大会にも出場して、全国大会で素晴らしい成績を残した。しかし、大学も私生活も充実しているはずなのに、私はどこか胸躍るような楽しさがないことを感じていた。チアダンスではないサークルへは大学入学当初から所属していたが、軸足はチアのチームに置いていた。大会が終わり、違うことを頑張ってみようと思った私は、チアをやめサークル活動に力を入れ始めた。すると、そこで衝撃が走った。ダンスがすごく楽しい。今までやったことがないジャンルのダンスに触れて、自分の知らない自分が成長していくのが分かった。初めてのことにたくさん触れることができ、様々なことに挑戦できる環境は、わたしにとっては天国のような場所だったのだ。
◎ ◎
サークルの総会員数は約500人で、いわゆる超マンモスサークルである。イベントや大会の規模にもよるが、大体1つのイベントに、所属サークルから100~350人ほどが集まる。とはいっても、ダンスのジャンルは様々で、同じジャンルを踊ることになった人とは仲良くなるが、そうでない人とは全く話したことがない、というのはざらである。約2年間続けてきて、やっと同期200人弱のほとんどと友達になれた。今までの私のコミュニティは、多くてもせいぜい部活動や学校のクラスの40~50人程度であった。同期が200人もいると、少し見渡すだけで様々な人がいて、はじめは文化の違いや様々な考えの違いに混乱することも多かったが、だんだん人の面白さや多様性があることの面白さを感じるようになっていった。
サークルではもちろんダンスの高いスキルが求められる。しかし、人の価値はそれだけではない、と私はサークルの仲間たちを通して学んだ。人には人それぞれ頑張れること、覚えられることの許容量があり、価値観も全く違うのだ。また、ひたすらに頑張ることだけがすごいことではない、ということも知った。これは、思えば当たり前のことかもしれないけれど、日常生活の中で意識するのは慣れていないとかなり難しい。頑張り続けていたらいつかは疲れてしまうから時には休息も必要だし、自分の価値観を他人に押し付け、縛るようなことがあってはいけない。
◎ ◎
また、例え相手の良いところが見つけにくかったとしても、まっすぐに向き合って良いところを探そうとするのが、他者とつながりを持って生きていくためには大切なのである。サークルの友達にとても素敵な考え方を持っている子がいて、その子と話すたびに、私は「なんて素敵で温かいのだろう」と感心してしまう。
ダンスはその人の人間性がよく表れると思っている。動きをそろえるチアはとても楽しくやりがいがあったが、どれだけ人数が多くても一人一人と向き合えるような体験ができるサークルでのダンスは、私の人生や人への考え方をまるっと変え、新たな世界を見せてくれた。私は「ありのままの自分を愛そう、ありのままの相手を愛そう」と思うようになったのである。それを私に気づかせてくれた、ダンスを取り巻くその環境こそが、私の視界をひろげたものであり、得た考えや価値観は今後も大切にしたい宝物である。