私にはお守りにしている経験がある。それはコロナ禍で過ごした高校生活での経験である。私は現在大学2年生で、まだ20年間しか生きたことがないが、そんな20年の内で一番辛く、苦しかった時期が高校2年生の時であった。

私が高校2年生になる直前、高校1年生の春休みにコロナが猛威を振るい、学校は休校に。私はその当時、期末試験がなくなってラッキーと呑気に過ごしていたが、コロナウイルスは収束の気配を見せず、状況はますます悪化していった。学校も6月まで休校になり、やっと始まったと思ったら、実際は分散登校で、仲の良い友達に会えないなど、今までの学校生活とは程遠いものであった。

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特に私を苦しめたのは、部活動ができないことであった。私は中学から吹奏楽部に所属し、毎日朝練を欠かさず、部活に対してとても一生懸命だった。あんなにひとつのことに集中して取り組んだのは人生において最初で最後だと断言出来るほど部活に夢中だった。

そんな私には、高校2年生で出場する最後のコンクールで金賞を取るという夢があった。これは同期みんなの夢でもあり、みんながこの夢を叶えるために同じ熱量で部活に励んでいた。そんな中、コロナは無慈悲にも私たちの夢を壊してきた。学校に行けるようになり、授業は始まったものの、もちろん部活は禁止されたまま。コンクールは毎年8月に行われるのだが、6月の段階でいまだに部活をやることを許可されず、私は焦りの気持ちでいっぱいであった。それでも諦めず、部員のみんなでZoom会議をして励ましあっていた矢先に、コンクール中止の発表があった。

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その後も文化祭や体育祭、そして高校2年生の一大イベントともいえる修学旅行さえも中止となってしまった。ただでさえコンクールに出場するという夢を絶たれたにも関わらず、高校生活の楽しみのほとんどを失った。あんなに泣いた1年は今までもこれからもないのではないかと思うほど泣いた。

そんな日々を過ごす中、2年生の終わりに担任との進路面談の機会が設けられた。私は正直大学受験のことを考える余裕がなく、先生に「高校生活に未練が残りすぎて、受験のことを考えられない」と本音を打ち明けた。そんな私に先生は、「死ぬこと以外かすり傷だよ。命さえあれば今諦めなければならないこともいつか必ずできる時が来る」と励ましてくれた。

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私はその言葉を聞いて、目の前のことしか考えられていなかったことに気づかされ、もっと未来に目を向けるべきだと強く思うことができた。その言葉をかけてもらってから、私は将来の自分のために今何ができるかと考えるようになり、まずは夢だったコンクールに出場するため、部活ができない今だからこそ、勉強に励むことに決めた。

これは、高校3年生でコンクールに出場するためであった。私は今諦めなければならなくなってしまった夢を、1年後の自分にたくすことにしたのだ。もちろん大学受験をおざなりにすることができないため、部活と勉強の両立に必死になった。その努力のおかげもあって、成績も安定させることができ、また、夢であったコンクールに出場することができた。

満足のいく結果は残すことができなかったが、夢を叶えるために必死に努力したあの日々は、何にも代えがたいすばらしい経験であった。私は辛い時に、これを乗り越えたのだから大丈夫とこの経験をお守りにしている。コロナウイルスによってたくさん苦しめられたが、私はこの経験を高校生の時にできたことが、今の私の大きな力になっているのだと実感している。これからもこの経験をお守りに、様々なことを乗り越え、日々成長していきたい。