私は、今年20歳を迎えた。先日、地元で行われた二十歳を祝う会で、久しぶりに中学時代の友人や先生方と再会した。5年ぶりの再会に、私は胸を躍らせた。そのあと、同じ部活に所属していた友人数名と中学時代について語り合い、その時に一人の先生の話になった。それは、私が所属していた部活動でお世話になった顧問で、中学2年の時には担任の先生だった。私はその先生こそ、自分の成長を後押ししてくれた人だと思っている。その先生は普段、親身になって生徒に寄り添ってくれる明るい先生だった。私は、そんな先生が大好きだった。

人生初めての経験で不安と葛藤

中学時代、吹奏楽部に所属していた。校内一練習が厳しいといわれていただけあって、日々の練習はハードだった。そんな部活で、2年の秋に私は部長に選ばれた。

「なんで私なんかが?」といまだに思うくらい、当時の私は目立つタイプではなかったし、人をまとめるような人間ではない。そんな経験なんて、それまでほとんどなかったから。それも、校内一の部員数なんて無理。こんなことを思いながら、その先生にすぐ、「なんで私なんですか!?」と興奮したように話した。これからどうやってチームをまとめていくのか、その先生にアドバイスや話をしてほしかった。

その先生は私の話を静かに聞くだけで、何も言わなかった。その時、その先生が珍しく話し込むことなく、一言だけ言い放った。「私は何も言うことがないけど、あなたがやりたいようにやっていけばいいんじゃない?」。私は内心、「え、それだけ?」と思ってしまった。

感化された先生の言葉

すると先生が、「私はあなたがこの一年で人として、どのように成長するのかを見たい。今言えるのは、それくらいかな」と言って話が終わった。その答えを探すために、私はとにかく日々の練習に打ち込んだ。部長を務め始めたときは、毎日の部活が憂鬱でしかたがなかった。次第に不安をかき消すように充実した日々を送っていた。

そして、夏の大会。この大会は吹奏楽をやる人にとっては、最も重要な大会の一つである。当然、私にとっても思い入れのある大会だ。私は1、2年と先輩たちとともに、大会に出させてもらったが、悔しくもよい成績を修めることができず、涙をのんだ。そんな先輩たちの思いも背負った最後の大会だった。3か月前から、テスト期間以外はほとんどの時間を部活に費やしていた。この3か月間は、本当に濃い時間だった。同期と本気でぶつかったり、ふざけあったり。こんな時を経て、いざ本番。緊張で心臓の鼓動が聞こえるくらい高鳴っていた。最初の一音目が始まると、演奏はあっという間に終わった。その瞬間、私は今までにない達成感で、結果がどうであれ、このメンバーで吹奏楽をやってきたことが本当にうれしかった。

青春そのものだった中学で過ごす最後の夏

そして、結果発表の時。各中学校の代表生徒が舞台上に並び、大会組織委員会の関係者の方から、演奏順に伝えられる。私も舞台に上がって順番を待つ。次々に結果が伝えられ、いよいよ、私たちの結果が伝えられるとき。この瞬間の緊張とドキドキは今思い出しても、手に汗握るような場面だった。その結果は、見事金賞に輝き、それと同時に県大会に進むことができた。

その後、メンバーとすぐに合流し、喜びを分かち合った。合流した際に、私は仲間たち全員から、「ありがとう!○○が部長だったから、ここまでこられた」と声をかけられた。その瞬間、安堵と仲間からの感謝の言葉から、その場で泣き崩れてしまった。「ありがとう」とはとても単純な言葉に聞こえるかもしれないが、私の中でその時に伝えられた言葉は、かけがえのないものだった。

このときに、ようやく先生と約束していた答えを見出すことができた。そして、引退の日。先生から、「一年間よく走り切ったね。お疲れ様。私が思っていた以上に、あなたは成長した。苦しくてつらくて、心配になって声をかけようと思った時もあったけど、それにも立ち向かって、頑張ってくれた。このチームを引っ張ってくれて、ありがとう。その先生にかけてもらった言葉が、「責任」という言葉で、重くのしかかった私の肩を軽くしてくれたのだ。私は、この人のことを生涯忘れない。