私は今年度「上司ガチャ」に当たった。これまでがハズレだったわけではない。
これまでの上司は私の社会人人生において、必要なことを教えてくださった。
特に昨年度の上司の下で働いていなければ、私は今年後輩を指導する立場にも就いていないだろうし、やりたい業務にも携われていないように思う。
今年度の上司は異動してくる前、上司の先輩や元上司、後輩、一緒に働いたことのある海外拠点の人までが褒める、悪い噂を聞いたことがない人だった。
私自身はあまり社内で顔が広くないため、上司が異動してきたときに、初めて上司のことを知った。最初は、悪い噂が1つもない人なんていないだろうと思っていた。だが、同じチームで働いて10ヶ月経つが、これといって不満はない。むしろ感謝の念しか湧いてこない。
今年度の上司はガチャで表現すると、UR(=ウルトラレア)だったのだ。
その証拠に、上司を古くから知る先輩が、以前上司の下で働いたときは、社会人人生で一番楽しかったと言っていた。今上司と働けていることは、とんでもない幸運なのだと改めて実感した。
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今年度上司と働き始めて、上司の素晴らしさはどこにあるのか探した。
中でも、コミュニケーションの取り方には目を見張るものがあった。私は会議前のアイスブレイクが苦手であると同時に、必要性を理解できていなかった。早く本題に入り、さっさと会議を終わらせた方が効率的だと考えていた。
しかし上司は、会議開始時にも電話をかける際にも、必ず相手のことを慮る内容の話題や、冗談を言って場を温めてから本題に入る。そうすると、相手からも本音が引き出しやすく、結果として会議が早く終わることが多々あった。これが文字通りの「アイスブレイク」の効果かと舌を巻いた。
また、上司だからといって威張るようなことはせず、担当層まで別け隔てなく接してくださる。その結果、上司にも声がかけやすくなり、相談事も気軽にできるようになった。相談事を解決するにあたり、チームでのコミュニケーションも自然と活発化した。
そして、チーム全体が助け合う良い雰囲気に変わった。出勤するときも、チームのメンバーに会えると思うと楽しみになる。自分の心境の変化に驚いた。
まだまだ上司の良いところは書ききれていないのだが、こんなに素晴らしい上司は、8000人に1人の割合だと思う。チームには8人部下がいるので、私は1000人に1人の存在だと言える。
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上司を含めたチームの一員として働き始めた副産物として、自己肯定感が上がった。
昨年度までは、自分の仕事や存在に自信が持てなかった。いつも手探りで仕事を進めていたし、完璧を求めなければならないのに、程遠い成果しか出せないことに常に落ち込んでいた。今年度に入り、チームの中で必要とされていることを実感し、自分の業務の進め方に自信を持つことができた。
小さな成功体験を積み重ねるうちに、いつのまにか自分で自分をねぎらえるようになった。
上司のような8000人に1人には及ばないが、1000人に1人の存在だと胸を張って平気で言える。自己肯定感が低かった昨年度からの心境の変化に、自分が一番驚いている。
ところが2ヶ月後から始まる来年度は、私は今のチームから異動することが決まっている。
素晴らしい上司と1年しか働けなかったことは残念ではあるが、この1年間があるとないでは、私の人生は大きく変わっていただろうと確信を持って言える。
今の上司と離れて、新しいチームに後から入って、楽しくのびのびと働けるか分からない。
つまづいたときは、このエッセイを見返して、尊敬する上司の振る舞いを思い出すようにしたい。