そのうちいつか、私にも恋人ができるだろう。
そう思いながらもう27歳になっていた。

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中学の時、誰と誰が付き合ってる、といううわさを聞いてふーん、ませてるなと思っていた。

高校の時、とにかく毎日課題に追われていてそんな余裕はなかったし、恋愛に勤しむ同級生や世の同年代に対するちょっとした妬み嫉みを笑いながら共有できる友達がいた。

大学は、滑り止めで受かったところに入学することになった。

第一志望の大学は、すごく上手くいけば受かることもあるかも……!?くらい可能性が低かったのに、周りの雰囲気と変に高いプライドに引っ張られて受けることにしてしまった。
結局必死に勉強することができず、案の定落ちてしまった(当たり前のように大学を受けさせてもらえた環境にいれたことはとても贅沢な話だったのだなと今では思うが……)。
大学が決まっても楽しいキラキラキャンパスライフ!を自分がやろうと思ったことがなかった。
片道2時間かけて大学に行き、授業が終わったらすぐ帰るような毎日が数年続いた。
サークルには入らなかったが、男女比4:1の工学部で男性と関わることは多く、男性と仲良くなれる可能性は大いにある環境だから、そのうち私も……という気持ちを持ったまま、誰とも特別な関係になることなく大学と大学院の6年を終えてしまった。

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20歳を過ぎたあたりから薄々感じ始めてはいたが、私は普通に生きてたら自然と恋人ができるタイプの人間ではないのだ。
なぜなのか?
見た目が良くない?
昔より多少は垢抜けたと思う。しかし、それなりの服装をしてしっかり化粧できるようになったことはプライドの高さしか象徴してなくないか?
化粧っ気のないオタクっぽい女の先輩でも結婚しているというのに。
こうやってその先輩を若干見下してしまっているような人間性が悪いのか?
人懐っこくないところ?怠惰なところ?

そもそもなぜ恋人ができないことが苦しいのか?
他人に何かをしてほしいと思うことがあるか?
家事の負担が今以上に減ることなんてないのでは?
でも一緒にいることが自然な関係を他人と作ってみたい。
たまには話し相手が欲しい。

そんなことを考えることが最早趣味みたいになっている。あるいは自慰のような、自傷行為のような。
これを友人に言ってみたら「考えるんじゃない、行動だよ」と言われてぐうの音も出なかった。本当にそうだと思う。
自分にないものを嘆いていてもしょうがない。人と比べてもしょうがない。
動くならマッチングアプリをやるしかないのか。

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そうして始めてみたものの、3日でアプリの存在を忘れ、全て面倒になってアンインストールしてしまった。
もういいや。焦っても仕方ない。
こんな堂々巡りで年を取っていくのか。
やっぱり焦る。

恋人以前にもっと他人とコミュニケーションを取った方が良いんだろうな。
恋人ができたことがないことに引け目を感じてしまうような世間一般の感覚を自分が持ってしまっていることが苦しいのか。
経験がないことが苦しいなら経験してみるしかない。
経験したところでまた別のコンプレックスが顕在化することが簡単に想像できる。
この自信のなさが生きづらさの原因なのか?

……といった感じに考えすぎている毎日なので、考えるのはほどほどにして少しは行動しようと思う。
またマッチングアプリ入れてみるか。