さよならを言えなかったこと。
さよならすら言えなかったことがたくさんある。いつのまにか私の周囲からは消えてしまった人がたくさんいるような気がする。私は人よりも友達と呼べる人がかなり少ない人間ではないかと思っている。
私の年齢だと結婚ラッシュだが一度も結婚式に招待されたことがない。
また、結婚するんだよね〜、旦那はこういう人で〜と話を聞いていたのに結局呼ばれなかったこともある。共通の同期から結婚式があったことを聞き、少し寂しい気分になったこともある。

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私は不安を感じて人の連絡先をよく消してしまう。いわゆる「リセット症候群」である。
人をなかなか信じられないところがある。

自分には友達がほとんどいないのではないかと初めて感じたのは中学生のときだった。

いじられキャラで天然だと言われてからかわれることがあった。グループの中では馬鹿なふりをしていてヘラヘラ笑っていた。
高校生になって彼女たちとは違う学校に行ったが、ときおり集まっていたようだった。私は呼ばれることはなかったし、LINEのグループには入れてもらえなかった。
大学のときは、すでに入学前からインターネット上にコミュニティができていたようで、授業を受けるときに1人で受けている子は見当たらなかった。
「よっ友」が、たくさんできた。挨拶や簡単な会話をするだけの関係。それは私にとって苦しいことで距離感が分からずにずっと悩んでいた。

友達とはいえない曖昧な関係。

ある日、プライベートで嫌なことがあり、連絡先を片っ端から削除した。削除した瞬間なんとも言えない爽快感を感じたが、同時に罪悪感が襲ってきた。何度も会う関係だと気まずさが残る。
社会人になってからもそのくせは続いた。自分がキャパオーバーになると、連絡先を削除する。周囲はそれに驚き、中には怒りを示す人もいた。

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友達の定義ってなんだろう。とずっと考えてる。
私が難しく考えすぎているだけなのだろうか。
誰も私に連絡をくれる人がいないし、私が連絡先から消えても心配してくれる人はいなかった。価値観が合えば、趣味を一緒に楽しんだり、食事に行ったりするのだろう。
社会人になって、家と会社の往復ばかりの私はますます友達の定義がわからなくなっている。

自分の存在意義も分からなくなってきたりした。
先日も連絡先を削除した。
この感情をどう表現して良いか分からないが、インターネットの何かのコラム記事を目にしたときに、私みたいな状態の若者が増えてきているということを知った。

家族以外の人と深く関われなくなってきた。
1人の時間が増え、自分は孤独な存在だと思い悩んだ時期があった。
今は価値観が合わなければ無理に関わろうと頑張らないようにしようと、誘っていただいても丁寧にお断りしている。
職場の飲み会も参加が億劫になり、断ろうかと悩んでいる。感じ悪いと思われたら……とも思うが自分の気持ちに従ってもいいのではないかと思う。

はっきりとした理由なしに、人は曖昧に離れていく気がする。さよならも言わずに。
なんだかあっけない。