大学3年生の冬、私は急いでエントリーシートを書いていた。なんとなく書こうと思っていたことを、私の頭の中で文章として起こしていく。「長所」「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」「志望理由」、何度も何度もああでもないと推敲した。
普段よりも文章を読んで、色々なものに触れようとした。志望業界に絞り、とにかく送りまくった。とにかく文字に、本に関わる仕事がしたかった。
それは昔から何となく思っていたし、私ならなれるはずと信じて疑わなかった。
でも、私は希望の業界に就くことは叶わなかった。
「これなら」と思うような納得のいく文章は出したけれど、他の就活生はもっとすごかったのだと思う。他の就活生に私は完敗してしまったのだった。
志望業界を諦めた私は、「向いていそう」という理由で希望していなかったIT企業に就職した。両親共にITに従事した経験があって、「私の性格ならきっと向いているんじゃないかな」と言われた。両親の知っている業界ならきっと私も安心して働くことが出来ると思って、スカウトが来ていた企業にエントリーシートを出した。
しかし、この決断にその後私は悩まされることになる。
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ITの仕事は楽しかった。何かが出来るようになることも好きだったし、勉強も苦ではなかった。勉強すれば資格も取れて、すごいねって言われる。
私は自分が思っていたより頑張れて、何より頑張ることが好きだったことに気が付いた。私は次々勉強して、出来ることを増やそうと努力した。
しかし、だんだん私の努力はここでは報われないと、そう思うようになった。
何か決定的なことがあったわけではない。私が仕事で躓いたわけでもない。しかし、「このままでは駄目、もっと頑張らなくちゃ」という私は職場で浮いていた。
仕事をがむしゃらに頑張り「無理をしないで」と言われた。
「私は頑張りたいのに、なんでそんなことを言うの?」なんて心配してくれている人に言えるわけもなくて、どこかモヤモヤしたまま仕事をするのに疲れてしまった。
私は確かに仕事内容に向いていた、けれど……。
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「でも」「けれど」を重ねる自分にも嫌気がさして、転職を決意することになった。
今は再びかつての志望業界に就くことを目標に就職活動をしている。なんで懲りないんだろう、諦めなよという弱気な私を説得して今日もエントリーシートに向き合う。
かつて「夢では食っていけない」と信じ、夢以外でやりがいを求めることに疲れてしまった。夢はお金にならないこともあるし、夢だけじゃ私は駄目になる。けれど、ただお金をもらうだけの仕事をするのでは私は夢どころか希望を失ってしまう予感がした。
この決断が吉と出るのかは今はわからない。けれど、私はもう少し目指す自分になるために頑張りたい。だって、頑張ることが好きだから。
そして、その頑張りで「夢で食っていくこと」が出来たら私はこの上なく幸せになれると思うから。