人生において重要なことを決める時ほど、人は直感だけで動くと思う。
私は現在研究のキャリアを追求しているが、これまでに重要だったと思える決断は全て、深く考えずに選択したものばかりである。
その中で最も重要だったのは、高校1年生のときの決断だ。

5月のある日、教掲示の1枚のプリントが目にまった。大学の講義をオンラインで聞くことができ、さらにレポートの成績が良ければ研究室で1年間ほど研究活動ができるというプロジェクトの広告だった。

中高一貫校だったため環境の変化は少なかったものの、授業が一気に難化し、さらに部活動の時間も長くなったことで忙しい日々を過ごしていたのに、私は参加を瞬時に決めてしまった。普段は教室掲示など目にも留めないのに、これだ!と直感で決めたのだ。

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いざ参加してみると、専門的な講義の理解と慣れないレポートに苦戦し、部活動にはほとんど参加できない時期が続いた。先輩達も最初は理解を示してくれていたが、だんだんと欠席が続く私に不満を抱いていることは明白だった。だからといってレポートを疎かにすると研究活動に参加する資格を得られない。それだけは嫌だった。

たまに送られてくる先輩からのLINEに「すみません、もう少し来れなさそうです」という返信を繰り返し、学校から直帰して1人でパソコンとにらめっこ。十分な勉強時間も確保できなくなり、毎朝の小テストの対策も疎かになりつつあった。

本末転倒かもしれないが、それでも研究室での研究を夢見て教授からのレポートの評価に一喜一憂する日々。先の見えない日々とはこれか、と思っていた矢先、希望していた研究室からメールが。そこには、これから一緒に研究を頑張りましょうという一文があった。
まるで大学に合格したかのように喜んだ。

それからの研究室での研究も決して楽ではなかったが、とても刺激的な経験ばかりだった。初めて見る研究機器の数々、教授や大学生との会話。さらに私が以前から興味があることについて話したところ、その研究をしている別の教授まで紹介してくださった。

それをきっかけに志望校を決め、目標を持ったことで学校の勉強にも身を入れることができ、しばらくすると成績も入学当初の頃に戻ってきた。
受験生になっても目標が変わることはなかった。プロジェクトへの参加という経歴があったこともあり、志望校には総合型選抜で無事合格することができた。

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あの時プロジェクトへの参加を躊躇していたら、と考えることがある。

3年間しっかり勉強できていたら、もう少し上の大学に進学できていたかもしれない。それでも、高校1年生で大学の研究室を見たことで勉強への意欲は格段に向上したし、目標を持って努力することができた。何より、高校で貴重な出会いと経験ができたことは大きい。そう思うといつも、あの時の自分は正しかったと思える。

人生は選択の連続だ。一つを選択することは他の選択肢を捨てることだと、ある先生が言っていた。その通りだ。プロジェクトに参加したことで部活動を諦めることになったし、一時期は成績も低迷した。それでも今、後悔は全くしていない。
直感だけで動いたことで、本当に必要なものを損得なしに選ぶことができたのかもしれない。