主婦業を営んでおいてなんだが、好きと言える家事がなかった。むしろ主婦業を営み始めてから完全になくなったと言っていい。

最後の砦だった料理も、節制・見栄え・ボリューム感・美味しさという4つの両立をするのがどんどん重荷になり、ここ最近は豆腐と何かしらの野菜を切って煮込むだけの麻婆豆腐か、茹でるだけのカレーばかり作っていた。つまりレトルトフル活用である。

もやしと鶏むねを使った炒め物とかよりも反応がいいし、それでいいんじゃないかって‥‥‥。セールを狙っていろんなメーカーを試しているが、麻婆豆腐は丸美屋の大辛が暫定1位である。

そんな感じで家事へのモチベーションゼロになってしまっていたのだが、このたび引っ越しをして掃除に対する心境の変化があった。ゼロからならやる気になれる気がする。そして、少しお金をかければ掃除を好きになれる、と。

この文章は、掃除好きになるぞという決意表明でもある。

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私は掃除を習慣にできないまま大人になり、結婚し、家事労働を行なう主婦となった。つまり割と詰んでいる。一人暮らしのときは気が向いたとき(基本来ない)か、ゴミくずが気になって仕方がなくなるまで放置しがちだった。

そのため結婚後は少なくとも日曜日は床掃除を含む掃除を必ずやると己に課した。この1回はやらないとさすがに夫に怒られるだろう(?)と思ってなんとか続けてきたが、1mmも楽しくない。それに拭き掃除は昔ながらの雑巾がけだったため膝も痛くなるしで、週末が来るのが憂鬱で仕方がなかった。

ちなみに、床掃除を雑巾にしていたのは節約のため。雑巾は掃除用具の中でもリーズナブルで手に入るし、洗えばしばらく使える。そして頻繁にやらないのも相まって、掃除にかかる出費はかなり抑えられていた。

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しかし、今年はそれをやめようと思う。出費を増やしてでも楽しくできる方法を選びたい。そして小まめに掃除をすることで、「いつ掃除しているかわからないのに常に小綺麗」という状況を保ちたい。

その第一段として、超強力なアイテムを手に入れた。その名は、クイックルワイパー。立ったまま床が掃除できる便利アイテムである。有名かつ人気アイテムなので説明するまでもなかったし、「何を今さら?」と思う人も多いに違いない。しかし私はこれを買うのも渋るくらい掃除への予算をかけられていなかったのである。

だがこの春に引っ越しをし、ゴミ一つない綺麗な部屋を見て「これを失ってはいけない」という気持ちになった。

部屋を綺麗にするといろんなことがうまくいく、みたいな話をどこかで聞いたことがあるような気がしなくもないし(どっちなの)、仕事でPCにかじりつきっぱなしよりもプチ掃除を挟むことでむしろ気分転換になって仕事が速く進む可能性だってある。そうであってほしい。頼むよ。

これまでクイックルワイパーを売場でまじまじと見たことすらなかったため、白以外があることすら知らなかった。迷わずブラックをチョイス。だって黒ってカッコいいし、魔術師の杖っぽさもあるではないか。

そして「魔術師の杖」っぽさは、実際に使ってみてさらに実感するところとなる。床をすいーっと滑らせていくのが非常に気持ちがいい。歩くだけで床が綺麗になるし、雑巾よりも衛生的な気すらした。

私は自分の掃除能力に自信がないため、自分の力が介入する部分はなるべく減らしたほうが安心できる。その意味でも、クイックルワイパーは救世主のようだった。雑巾は拭き塩梅・終わった後の洗浄&絞りかたという部分にマンパワーが介入するが、クイックルワイパーは棒を握って押していくだけ。安心感が全然違った。

まだ1日目だが、これはかなり期待できる。少なくとも3日続いてから言ったほうが説得力が出るというものだが、杖を手にしたこの高揚感をすぐにでも記録したくなってしまった。そして気が変わらないうちに宣言をしておきたいと思ったのである。苦手なことはやる気になったときに進めないと、「次」がいつ来るかわからないから。

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クイックルワイパーでやる気を維持しつつ、旧居ではテキトーに置いていた掃除道具も、部屋のレイアウトが決まりきっていない今を狙って随所にねじ込んでいきたいところ。

そこにいるだけで気分が上がるような部屋。それを守る魔術師に、私はなるのだ。