大学生で落ちた恋。わたしはこの恋をきっとこの先も忘れないだろう。
出会いは旅先。緊急事態宣言の最中、コロナ禍で大学生生活を全く楽しめていなかったわたしは、あるゲストハウスが主催する1週間のシェアハウス企画に参加した。

泊まる場所はそのゲストハウスで、参加者はみんな大学生。オンライン授業で家から出れず精神的にやれていたわたしは、何か動き出すきっかけを得ることができれば、少しでも新たな世界に触れたいと、期待感と楽しみと少しの不安を持って参加した。

昼間にはビール片手にBBQ。オンラインで授業を受け、パソコンを机の上で向かい合わせながらやる大学の課題。お酒を飲みながら恋バナ、将来、夢について語り合った深夜。ゲストハウスでシェアハウスした1週間は、コロナによって失われてた大学生生活の青春が詰まっていた。

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そしてそこでわたしは出会った。そのゲストハウスの常連でたまたま泊まりに来ていた彼。彼はなんだかんだ延泊を重ね1週間まるまる一緒に過ごした。

一緒に過ごした時間に感じたことは、なんだか安心する。もっと話したいということ。しかし一方でこの人にハマってはいけないと直感は警報を鳴らしていた。

お互い住んでいるところが近かったこともあり、ゲストハウスから帰ってきたあと2人でご飯に行くことになった。ドキドキしながら彼と再し、ご飯へ。帰りはなぜか2駅分くだらない話をしながらノロノロ歩き、途中から電車に乗って帰った。

きっとお互い好意はあった。しかし気付かないふり。今思い返せば浅い恋の駆け引き。でもその時のわたしにはそれがとてつもなくドキドキして、甘酸っぱくて、青春だった。

もう告白のセリフも、そもそも告白をしたのかすらも覚えてはいないが、彼とわたしは恋人になった。

実家暮らしのわたしは、彼の住むワンルームに入り浸った。近くのコンビニにお酒を買いに行く夜。一緒に料理した狭いキッチン。わたしの初めてを捧げたベッ。喧嘩したときに頭を冷やしに行くすぐ隣の公園。手を繋ぎのんびり歩きながら向かうコインランドリー。

今まで超真面目な恋愛しかしてこなかったわたしには、全てが刺激的だった。そして恋に溺れた。長いときは1週間ほど彼の家にいたし、飲みすぎて次の日起きれず大学の授業を休んだこともあったし、少しでも長く一緒にいたくてバイトに遅刻して行くこともあった。

それでも彼といる時間が幸せだった。何もかもうまくいかなくて沈んでいたときにくれた一輪のひまわりはきっとこれからもわたしの心に残るだろう。

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しかしそんな恋もあっという間に終わりを迎えた。

わたしたちが初めて出会ったゲストハウスで、彼が新たな恋に落ちたのである。やり直せるのではないか、持ち直せるのではないかと思った瞬間もあった。しかしどうしても無理だった。ゲストハウスはわたしたちに出会いも別れも運んできてくれたのだ。

別れの言葉は「またいつかどこかで笑顔で会えるといいね」。そう言ってお互い抱きしめ合った。

あの恋がわたしの青春の全てだった。大学生という輝かしい若さだった。今のわたしは大人になりすぎて、もう一度同じように出会ったとしても、あの恋はきっとできないだろう。

眩しすぎる思い出はそっと胸の奥にしまって、いつか笑顔で再び出会える日を願う。