わたしは今年、失恋した。
お正月になんと、推しが結婚したのだ……!!
"推し活"が身近ではなく、理解できない方々にとっては、推しの結婚は失恋ではない、と思うかもしれない。
しかし、そこまで有名でないときやCDデビューをする前から応援していたわたしにとって、結婚という発表を知ったときは、思わずスマートフォンを投げてしまうくらいの衝撃があった。
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推しと同年代の同業者の結婚発表があったときに、担降りすると言っている人をSNSで見かけると「推し自身が特別変わってしまうわけではないのに、大袈裟だなぁ……」と、どこかひとごとだからこその想いを抱いていた。
しかしながら、いざ自分自身の推しのことになると、どこか裏切られたような、遠くへ行ってしまったような、そういったやるせなさに苛まれてしまったのかもしれない。
まさか、もしかしたら推しと結婚できるかも、と信じていたわけではないが、結婚できるわけがないからこそ、誰とも結婚しないでほしかった、または結婚しても公表しないでほしかったのかもしれない……。
しかも、その相手がわたしがあまり好感を持っていない方だったのである(実際にお会いしたことはないため、申し訳ないのだが、完全なるわたしの主観である)。
もちろん、「一般のお相手」とだけ発表されても納得はしなかったと思うが……。
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それまでは推しが出したCDやDVDは全て購入し、コラボカフェにも足を運び、出演作品は全て録画してチェックし、もちろんファンクラブにも入ってライブやイベントに参戦していた。移動中も推しの曲を聴き、スマートフォンの待ち受けも推しで、推し関連のSNSの通知もONにしていたため、24時間365日推しを浴びる生活をしていた。
またクリスマスの近くにはCDのリリースイベントが開催された。
CDのリリースイベントはCDを購入すれば応募でき、イベント自体の参加費用はかからない。1回当たり100〜200人ほどしか当選しない、倍率の高いものなのである。毎回CDを購入して応募していても、今まで1度だけコロナ禍以前に握手会に当選したことしかなかったため、どうせ当たらないだろうと思っていた。
そのため午後に予定も入れていたのだが、そういうときに限って当たったのだった。しかも、最前列の"どセンター"の位置の席で、本当に運を使い果たしてしまい、このことを話した人には「事故に遭わないように気を付けなよ」と度々言われるくらいだった。
事故には遭わなかったが、その翌週、例の結婚発表があったのだった……。
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リリースイベントに当選したことや、行くと席が最前列のど真ん中だったことを色んな人に話していたため、あんなにテンション高く話していたことが、今となってはなんだか恥ずかしい。
約5年という期間、わたしに夢や希望、頑張るきっかけ、ポジティブなマインドなどたくさんのことを与えてくれた推しを失った代わりに新たな出会いもあった。
どうやら、ひとつのものを手放さないと新しいものは手に入れられない、という話は本当だったらしい。