パッと見どこか俯きがちで終始無表情なのに、しれっと2回目のデートに誘うコンサルの人。
カフェで短時間って、ひたすら訪れた国や仕事内容の話をあちこち展開するメーカー営業の人。
付き合っているわけではないのに彼氏ー彼女か?と思うほど、一度会っただけで彼氏かのように毎日連絡をとってくる人。
忙しさを理由になかなか会う約束の日程が決まらない商社マン。
かと思えば、東京に帰るといったら、搭乗前に「気をつけて」と連絡をマメに入れてくる公務員。
外資系勤めで、プライベートでも会っている最中はお互い英語で話そうよと提案してくる日本人。
今度付き合う女性の条件に、「笑顔の素敵な人、国際経験ある人」と掲げる欧州系外国人。

私はマッチングアプリで知り合った何人かと、今月になり実際に会った。
自分ももうアラサーで、友人たちは次々と結婚し、子供がいたりする。私はちゃんと子供が欲しいので、将来を少し焦っている。仕事柄、東京にいるのが限られているので、1日に何人もと会い、付き合うことを考えられる男性と巡り逢うのを期待している。

◎          ◎ 

マッチングアプリで最初に会った人は、経歴的に硬い職業で安心できるかと思ったが、あまりに初対面の時の物理的距離感が近くて、帰りの電車で寒気がした。帰りの電話の中で「ほら、危ないよ」「荷物持ってあげるよ」と肩を何度かたたかれたし、吊り革につかまるもずっと私の顔面を近距離で凝視している。私はそんな一定時間を帰りの電車内で過ごして、げんなり、なぜか1人泣きたくなってしまう。

「どうやったら角を立てず、今後の進展を望まないことを伝えられるか」「どうしたらもう連絡してこないで欲しいことを上手く伝えられるか」を考えたり、「隣にいるのがあの人だったら……あの時に戻りたい……」と何年も前に付き合ってた彼を思い出しては、走馬灯のように空虚感に襲われる。

目の前の男性が悪いわけではないが、何度かメッセージした初対面の見ず知らずの人からの物理的距離が近づくにつれ、心理的に自分に期待され追われるにつれ、心の中でどしゃ降りの雨が降る。「(大切な人に今の私を)守って欲しい」と思ってしまう自分がいる。
電車が着き、六本木のホーム降り立った時、謎の解放感と「(前の彼と仲良くデートしていた)あの時に戻りたい……」と胸の中で本音がこぼれおちる。
その数秒後には、今の自分を肯定したく、「恋愛は幸せになるためにするもの」ときっぱり強気で開き直った、明るくて前向きな外資系営業ウーマンらしいフレーズを言い放ってみたりする。本当は、過去を後悔したり数年前の2人の思い出に未だしがみつきたい自分がいるのに。

◎          ◎ 

東京に戻り、こうして新たな出会いを探すたび、やはり私は外人と英語で仕事していた昔の自分に、(前の彼と)昔の2人で過ごした日々に心のどこかで戻りたくなってしまう。
まだ地方転職する前、それなりに身なりにこだわり、英語を使って外国人と東京の外資系で働いていた数年前の自分と、当時そんな自分が付き合っていた仕事もでき将来も考えてた彼との楽しい思い出が、数年を経てもそのままフリーズしている。

当時のあの恋があったから、将来を考えられるような彼に出会えていたから、、「今より幸せになるために」恋愛しようと思えるのだと思う。