私は面食いだった。面の良さが全てだった。
少女漫画も少年アニメも大好きな私は、現実での好意の判断基準がまずは「面(ツラ)」から入るタイプで、面が良ければよいほど、どんなに性格が悪くても許してしまう。
そんなおかしな恋愛観を持った私ちゃんは、とある恋がきっかけで3次元という圧倒的巨悪に押しつぶされてしまうのだった……!

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それは学生時代。羽を打つ部活に入って2年目の春。
部活の後輩から告白を受けた。

「先輩が部活頑張ってる所に惚れました。好きです、付き合って下さい!」

道具を運んでいるとすぐに手伝ってくれて、指示しなくも自分で判断して動ける子。
そして何より、お顔はシュッとしてて中性的でカッコ可愛い感じで、キャラクターとして表すなら人気投票で上位に必ず君臨しているキャラ的な、そんな立ち位置に居る子。
いやいやそんな事考えている場合ではない。

「(って、私告白されてんじゃん)」

我に返ってやっと状況を理解した。

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ここからの学生人生は物語の主人公になれるのだと自惚れた。
根はこんなだし顔立ちも下の中くらい。まぁ付き合えれば誰でも良かったわけじゃないけれど、面がいい人と付き合えるならそれが1番で。

私ってなんてラッキーなんだと自慢したくなった。

喜びが止まらず、私は早速仲の良い男友達に自慢をする。
(※後付ですが、私は工業の学校出身のため男とつるむ事が当たり前だったという事はご理解頂きたいです。女子が居たらその子とののんびりライフをここで出しますよ!笑)

さてさて、特に仲の良かったМに話すと笑いながら背中を押してくれた。

だがなぜだか心がざわつく。

いつも隣で笑ってくれてたこいつと、これから先は気まずくなるのではないかと思ってしまったからだ。

一方で交際は順調に進んでいった。部活終わりに公園で何時間も話したり、写真を撮ったり、恋人らしいこともたくさんした。
毎日毎日、幸せが続く日々。
毎日、毎日。
──幸せなことが、当たり前になっていく。

恋人ごっこを続けていくと、ある壁にぶち当たった。いつまで恋人ごっこを続けるんだろうと。

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面の良さがあれば、いつまでも好きでいられる。
しかし私は漫画でもアニメでも、今まで何度も「推し変」たるものをしている。

そしてその理由の多くは、「熱が冷めたから」であった。
折角のチャンスを掴んだというのに図々しいにも程がある。だが幸せな事が当たり前になってしまったこの恋は、熱々からぬるま湯へと冷めてきてしまっていた。

私はようやく、斜めった恋愛観に違和感を覚える。ここは3次元であって、2次元のようにはいかないのだと。

……恋への愛と推しへの愛を履き違えていたんだ。

付き合うことに疑問を感じていた私は態度にも出てしまってらしく、なんとなく彼とはきまずい関係になってしまった。
そうして私たちはお互いに何かを抱えたままお別れをした。

今思い返しても、本当に申し訳ないと思っています。ごめんね、彼くん。ちゃんと言えなくて。

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今回の経験を経て、私はとある事を思い出した。
これまで「現実の男に恋なんて出来なくて困っている女子たち」の相談を受けていた時の事を。

「2次元しか愛せない? あほか!」

そう言って、私を嘲笑する私が、今は見える。

自分の立場になってみて、くるものがあった。

これは戒めになるのですが、「恋愛」を学ぶ教材として「アニメや漫画」を選んでも良いけれど、次元をわきまえない身勝手な恋愛観を自分だけではなく、人に強要する事はとんでもなく失礼に当たるのです。

タイトル回収となりますが、私は「この恋をきっかけ」に人に自分の願いを押し付けるのではなく、自らが考え方や価値観を共有できるような人間となり、「ラブチャンス」を掴んでいけたら良いなと思えるようになりました。

そして人に自分の感情や願いを委ねて待っていて良い人というのは、3次元に存在する私達の中でも一握りなのかもしれないという現実を見たので、まっとうな恋愛をして生きようとこの経験を経て誓いました。

ラブ&ピース