中学入学前、私は英語が全く理解できなかった。
中学から始まる英語の授業に備え、小学6年生の春休みに準備の一貫として、父が参考書を買ってきた。
それまで文章で英語を目にしたことがなかった私は、一番最初に登場する"I am a student. "や"This is an apple."すら、なぜこの構文になるのか、発音はどうすればいいのか分からず、早速苦手意識を感じた。

英語の落ちこぼれまっしぐらだった私が、今仕事で英語を使わない日はないという企業勤めをしているのには、ある本との出会いがあった。

本の名前は『トワイライト』。カラフルな背表紙が並び、ワクワクした

小学生のときは、児童向けのミステリーやファンタジーの、主にシリーズものの本が好きで、高学年になると学校の休み時間にも読書に励むくらい本の虫であった。

中学に上がり、小学校の頃とは格段に蔵書が大人向けになった図書館で、クラスメートが教室で読んでいた本を見つけたので、面白いのかと何気なく手にとって見た。
その本の名前は『トワイライト』(ステファニー・メイヤー著、ヴィレッジブックス出版)。

その時点で出版されていたのは、洋書と同じデザインの文庫版ではなく、日本語版のペーパーバックだった。そのため、表紙にはイラストがあり日本語の副題もついていたので、ライトノベルかと思って手に取った。
カラフルな背表紙が何冊も並び、長編であることが伺え、シリーズもの好きの私はワクワクしたことを覚えている。

主人公と一緒に「彼」に恋をし、アメリカの高校生の生活にも憧れた

早速帰りの電車で読み始めた。
まだ読んだことがない人もいると思うので、詳細は伏せるが、舞台は現代のアメリカで、副題のタイトルからはファンタジー性が強いかと思ったのだが、意外にもリアルな高校生の日常が描かれていて、新しい世界にゾクゾクした。

帰宅してからも夕暮れ時の部屋で読みふけり、主人公と同じように「彼」に恋をし、そこから一気に本の世界に引き込まれ、同時にアメリカの高校生の生活にも憧れた。

中学3年生のときに、夏休みを利用して憧れのアメリカに短期留学した。
その時に知り合った日本人もトワイライトシリーズの大ファンだという人が何人もいて、あのシーンが好きだとか、今同じアメリカにいるということで大いに盛り上がった。

英語への興味が広がり、今では外国人の上司と英語で会話する毎日に

英語圏を旅行するたびに、洋書のバージョンも揃えていったことで、英語を身に付けて辞書なしで読みたいという目標が生まれた。
そのおかげで、学校の英語の授業も真剣になり、模試では英語が点数を牽引した。
それもあり、大学も国際系の学部に進学が決まった。
そのまま自然と海外と繋がりのある仕事をしたいと思うようになり、今では英語でメールを書き、外国人の上司と英語で会話する毎日を送っている。

恥ずかしながら、文法や語彙を覚えることはあまり得意ではなく、今でも洋書を読むときに辞書は必要不可欠である。
洋書を辞書なしで読むことがまだ達成できていない目標だからこそ、社会人になっても英語を勉強するモチベーションとなっている。

初めて『トワイライト』を手に取ってから約15年が経つが、未だに大ファンである。
あのときこの本と出会わなければ、私は今どんな仕事をしているのだろうとふと思うことがある。

英語や外国の文化に興味を持たせてくれ、私の世界を広げてくれた『トワイライト』シリーズには感謝してもしきれない。