会社の憧れの先輩とデートに行った。最初にデートに行って欲しいと私から誘ってから半年経っていた。もう実現しないかと思ったが、もう一度だけ 勇気を振り絞って、日時を決めることができた。

デートまでのドキドキする感じが久しぶりだった。今回は会社の人ということもあり、あまり大っぴらにはできないことも手伝った。

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デートの日、待ち合わせの時に、憧れの先輩に「会社以外で会うのは、なんか不思議な感じだね」と爽やかなスマイルと共に言われた。それだけで秘密を共有していることを意識して、舞い上がった。

会社とは違う襟のない T シャツ。その襟元から覗くのはネックレスだろうか。心なしかいつもと髪の毛のセットが違う気がする。前髪が目にかかっていることで、カッコ良さが倍増している。

これまで会社に着て行ったことのないワンピースに身を包み、気合を入れてる私と同様に先輩も会社とは違う一面を見せてくれやっとしているのかと思い嬉しかった。

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桜を見に行ったのだが、案の定人混みだった。自分がドキドキ高揚している時の特徴で、周りから人が消え、彼に集中する。後から写真を見返してみると、たくさん人が写っているのだが、彼の横でドキドキしていた私には多くの人に囲まれていたようには感じなかった。

歩き疲れて入ったカフェでは、ミルクティーを頼んだ。そこでは会社の昼休みにするような、でももう少し深入りした仕事の話を中心にした。会社でもできる話だなとぼんやり思った。ガムシロップを2つ入れたミルクティーは甘いのに先輩からはあまり好感触は伝わってこず、なぜか苦い後味ばかり感じた。

もしかしたら2回目もあるかもと期待をしてしまったが、全く私に興味がある素振りを見せない彼の態度から、次はどこに行きますか と無邪気に、そして冗談交じりにすら聞くことができなかった。

彼こそ恋愛強者だと思った。私とは恋愛偏差値が違いすぎるのだと、敗北感からこのデートは恐れ多いことだったのかとひれ伏したい気分になった。

自分磨きも仕事も頑張ってきたが、雲の上の人とはこのことだと思った彼は 恋愛経験豊富で 私のことなど対象にすら入っていなかったのかもしれない。初めて自分から勇気を出してデートに誘い、そのデートが実現できたこと、そして楽しかった幸せな思い出として、心の中にしまった。

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誰に聞いてもそれはデートだと言われるお花見をしたが、思い返すと私から合計3回デートに誘い、明らかにデートという状態でこの日の予定は決行された。

私にとっては、憧れの先輩との一大イベントだったが、彼にとっては1回デートに応じておけばもう声をかけてくることもないだろうという消化試合だったのか。答えは彼に聞かなければわからない。

ずっと彼に憧れを抱き続けるよりは、1回デートができ、会社では見せない彼の人となりを知ることができた。そして、私はまだまだだということを知り、もっと自分磨きを頑張ろうと思えたので、彼には貴重な経験をくれてありがとうと伝えたい。