私は今社会人をしているが、人生で一番の選択をしたのは、大学受験や就活よりも高校を辞めたことだと思っている。辞めたと言っても、全日制から通信制に転校したという話だ。

大した理由があった訳でもない。いじめもないし、仲のいい友達もいたし、勉強は嫌いだけどサボることもなく毎日学校に行っていた。ただなぜか行けなくなって、学校に着くと意味もなく涙が出て、気づいたら来た道を戻っていた。

行けない罪悪感と、大学に行きたいのに勉強が進んでない焦燥感、でもやっぱり行けない悔しさのような、様々な感情が混在していた。

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近場の公立を小中高と上がってきた私。それが普通だと思っていたし、高校に通って大学に行くのが当たり前だと思っていた。当たり前のことを当たり前だと思って、当たり前にできない自分が本当に嫌だった。

行けなくなってしばらく経つと、このままだと単位が与えられないと言われ、この先どうするかという話し合いを母親とした記憶がある。

最初は学校に行けと言っていた両親も、次第に諦めたのかそんなことを言わなくなっていて、辞めるならさっさと辞めて次に行った方がいいと言われた。大学に行きたいなら尚更だし、どのような選択をしてもいい、と。

転校するなら通信制。でもなんとなく、通信制だとまともな大学にいくのは難しいんじゃないかという気持ちがあった。けれどこのまま何もしないでいる方がリスクが大きいことにも気がついた。

その頃から通信制の学校の見学に行き始めた。3つくらい見学して、本校には通わず、近場の小さい塾を兼ねている提携校に通えば良い学校を選んだ。学校は行かずとも毎朝起きて支度をしていた私にとって、それをしなくて良くなったことでまず気持ちが軽くなった。

そこは週1、2回、同学年の子2人と授業を受け、レポートを出すことで単位を貰えた。
2人とも話しやすくて先生も面白い人で、相変わらず勉強は嫌いだけど楽しかった。

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無事希望の大学にも合格したし、大きな問題もなく社会人もやれている。この選択は、しんどい時は一旦手放しても良いことを私に教えてくれた。

嫌だからといってその度に諦めるのはなかなかできないとは思うけれど、少なくとも考えるだけで涙が出るような場所からは離れたらいい。

最初は次の場所が見つからないかもという不安も、見つかっても今よりも劣っていたらという不安もあった。でも探してみたら田舎にも意外とたくさんあるし、自分を泣かせているその場所より劣っているところなんてまあそうそうない、と思えるようになった。

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あの選択をしてなければ、今の自分はいないかもしれない。今は誰に何を言われなくても、辛い、辞めたいと思うことを辞めることができる。当たり前だと思う人もいるかもしれない。

でもそれができない人はたくさんいると感じる。多分どこかに自分に合う場所はある。それがみんなの当たり前の場所じゃなくていいし、1回目で見つけられる必要も無い。私もまだ次の居場所探しの途中だ。