ひとりでいることが苦手でした。
牛丼屋にすらひとりで入れないし、待ち合わせの時間までカフェで時間を潰さなきゃいけない時も、誰かとLINEしているのを装ったりして、「ぼっちじゃないですよ」アピールをするほどでした。そんな私に突然、転勤が決まりました。

初めての一人暮らし、初めての遠距離恋愛、初めての関東以外での生活。
絶対嫌だ、絶対会社なんて辞める!って思うほどショックでしたし、実際新生活がスタートしてからは、友達も恋人も家族もいないこんな土地になんでいるんだろうと、仕事から帰って号泣する日々が続きました。

寒空の下、ひとりぼっちの夜。私は人生で最高の夜を過ごした

でも、ある日ふと思ったんです。あれ、これ自分が自分で「楽しい」を邪魔してるな、って。
毎週デートしていた土日がつまらない、ランチに誘ってくれる友達がいない、ひとりぼっちの夜ごはんはつまらない。だったら、全部自分が楽しくさせてあげればいいんじゃない、って。

今までどれだけ他人に頼っていたのか、痛いくらいにわかりました。
土日は彼氏がいないと楽しくない、おしゃれなランチは友達がいないと食べられない、夜ごはんは家族と食べないと美味しくない。
いやいや、そんな訳、あるはずない!ひとりでだって、土日は素敵な場所に自分を連れて行ってあげられる自分になりたい。ひとりでだって、おしゃれなランチが食べたい。ひとりでだって、夜ごはんを楽しく食べたい。
そんな自分になりたい、って心から思いました。

だから、すぐに自分を自分でもてなす最高の夜を考えました。
私の好きな飲み物ってなんだっけ?から考えて、ミルクティーを、ネットで調べた丁寧な方法で、時間をかけてゆっくり淹れました。一番お気に入りのマグカップに入った、お店で淹れたみたいなミルクティー。それだけで、何かをやり遂げたような達成感。
せっかくだからとベランダでキャンドルを灯し、ブランケットにくるまって、ミルクティーを飲んだら、あまりに美味しくて、びっくりしました。本当に、びっくりするほど美味しかったんです。

私は自分のことを喜ばせられた、私だって、私を満足させてあげられるんだって、大切な学びを得たこの瞬間を、今でも忘れられません。
夜空の下、温かいミルクティーと、キャンドルと、ひとりぼっちの私。今までの人生で、一番ロマンチックな瞬間でした。

ロマンチックな夜が教えてくれたこと。私はどこにだっていける

そのミルクティーがきっかけになって、私は思春期時代以上に、自分に興味津々になりました。
どんな食べ物が好き?何に興味がある?どんな映画がみたい?好きな俳優は?好きな色は?好きな季節は?とにかく自分に問いかけて、問いかけて、問いかけまくり、「あれしたい」「これしたい」を全部叶えました。
今まで何度もデートで行った水族館も、ひとりで行くと生まれて初めての体験に思えるし、毎日のランチも、自分が食べたいものを考えて食べると、こんなに美味しいものなのかと驚くほどで、私にとって全ての体験、全ての選択が新鮮に思えました。
私は自分をどこにだって連れて行ってあげられる、私は自分をどこまでも幸せにしてあげられる、って思えたら、気づけば関東に帰りたい気持ちも、周りの人たちに執着していた気持ちも消えていて、「皆がいなきゃだめ」な私ではなく「皆を想う」私になれていました。誰かに執着するのではなく、誰かを想えるようになったんだと思います。

全ては全部、あのロマンチックな夜が教えてくれたこと。ひとりぼっちの夜こそ、どこまでも自由で、不思議で、ロマンチック。