コロナの残り香も、もうほぼ感じなくなってきた今日この頃。今年の夏は各地で平常通りお祭りが開催されることだろう。暑い中で人々の活気を感じられると思うと、脈々と受け継がれてきた大衆の血がドクドクと騒ぎ出す。

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私は、今夏は浴衣を着てお祭りに行きたい。

8年前、18歳の頃に地元のお祭りに行く時に雑貨店で購入した千鳥柄にピンクのバラの浴衣は、私の中の捨て魔が暗躍し始めた時に捨ててしまった。だから、新しく購入しようと思って通販サイトを覗いてデザインを見比べている。

私はケチでどだいお金もないので、5000円くらいを目安に探す。良いものを買って一生使うというのも憧れるけれど、それは30歳になってからでいいや。顔タイプ診断を受けた際、大きな曲線的な柄が似合うと言われたのでそれを頭の片隅に置きながら。

色々見ていると帯とセットで4000円という破格でも、心がキュンと高鳴るような可愛らしいデザインのものが見つかる。

通販サイトで購入するのもいいけれど、実際どこかのお店に足を運んで見て、デザインや生地をよく見て自分に合わせて納得して購入するのもいいなと思う。

今のところピンときたのは、モノトーンの椿柄に赤い帯がついている浴衣。大きな柄に派手な色だと悪目立ちしてしまうから、モノトーンというのがちょうどいい。赤の帯がアクセントになっているのがこれまた粋。

これを身に纏って、恋人にも浴衣を着てもらいお祭りに行って、出店でチョコバナナを買って思わせぶりにそれにかじりつきたい。いつも頭の中がそういった下卑たことに埋め尽くされているのは、私だけでしょうか。そして陽が落ちた頃、人の気配のない木陰でとろけるチーズのようなキスをしたい。

江戸や明治の人々もお祭りという熱気の中で様々な恋愛模様を繰り広げていたのだろうなと、胸が苦しくなるくらいに思いを馳せる。

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お祭りの後にはせっかくだから花火も見たい。火を見ると、本能的な"何か"が騒ぐ気がする。大きく打ち上がる花火を見て、自分のちっぽけさを痛感する瞬間が好きだ。

素直に「綺麗だね♡」と甘いはちみつにも似た声で隣の恋人ににっこり笑いかけるような雑誌に載っているような洒落た振る舞いができたらいいのに、私はどこまでもダサいオタク(太宰治のイントネーションで)だから、早口で「花火って誰がいつ打ち上げたんだろうね、なぜそれをしようと思ったのが動機が知りたいし、怖いとは思わなかったのかな?」とか言ってしまうことだろう。

ドカンと打ち上がる花火を見て心を揺さぶられた後には、春画のようなまぐわいをする。それが日本人の夏のトラディショナル・デートなのではないでしょうか。

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今のところはその椿柄の浴衣に決めているが、気が変わるもしれずまだわからない。夏までによ〜く考えようと思う。今年の夏は人いきれに各々の身をまかせて、共に熱に浮かされまひょ。