面接が苦手で内定をもらえなさすぎて「無い内定」と自虐していた。やがて自虐できる状況ではなくなり「就活が終活にならないようにしなきゃ」と言っていた。
第一志望の面接に行ったら、偉い人のやる気が異様になかった。何がどうと聞かれたら困るのだが、態度や言葉の端々から「女の子はいらないのかな」と感じた。そして落ちた。
当時はとても悲しかった。自分の力の及ばない性別という生まれつきの部分で判断された感触があり、やるせなかった。最終的に私は内定を1つしかもらえなかった。
そのことは私に影を落とした。自信を取り戻そうと就職後、仕事を頑張って、心身の体調を崩した。休職中の今もいずれ退職すると言いつつ、まだ転職活動の段階にないのだが、今から転職活動が怖くて仕方がない。
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就活中、履歴書の彩りになればと、資格取得要件をほとんど満たしていた防災士の資格を取ることにした。資格取得のための講義で「昨日の今の時間、あなたはどこで何をしていましたか?その時、東日本大震災のような災害が起きたとしたらどう行動したでしょうか?」という質問があった。
私は瞬時に「あ、死んだな」とゾッとした。昨日の今の私は、就活帰りで疲れ果てて電車に座り、パンプスに突っ込んだ足が痛いとシュンとしていたからだ。そんな時に地震が起きたら、生き延びる自信がない。あんな靴で逃げられるかわからない。しかもパンツスーツじゃなくてスカートだった。むしろ逃げ遅れて死ぬ方が自信があった。
母が気を使ってくれたおかげで私の足はのびのびと育った。土踏まずもきちんとあり、甲の幅が大きく、大抵の靴はつま先しか入らない、立派な足だ。
母は常に「かかとのある靴を履きなさい」と言っていた。要するにいざという時に走れる靴を履けということだった。かかとがなかったり、甲の部分のバンドがなかったり、ヒールがあったりする靴は、そもそも歩きづらいので履かなかった。
しかし、就活はそうも言っていられなかった。今、調べると甲の部分にバンドがあるパンプスも選んで良いらしいが、私の時は好ましくなかったような気がする。とはいえバンドがないと歩きづらいので100均で売っている透明のバンドを付けていた。しかし、あれはよく切れる。ストッキングと同じくらい消耗品だった。
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就活で強制された靴でいざという時に困ったり、靴擦れで痛い思いをするのは、非常に解せない。下手すれば外反母趾になり、健康を害する恐れもあるのに。やはり見た目の問題だろうか。外見は内面のいちばん外側という考えもあるかもしれない。
でも、それにしては犠牲が大きくないだろうか。女性の痛みは無視されがちと言われるが、それはここにも影響している気がする。足に優しいパンプスもあるが、そのようなものは高価で、就活生が気軽に買えるものではない。
パンプスがダメというわけではなく、ヒールの高さやバンドの有無や太さ、靴の形状など、選択肢を増やして欲しい。
父が雨の日に就活生を見て「ストッキング履いてれば濡れないんだろ」と言った。私は「何言ってんだこいつ」という顔をしながら「そんなわけないじゃん」と返したが、冷静になると履いたことがないストッキングがどのようなものか分かるわけないじゃんとも思う。
パンプスも同じで、ヒール特有の歩きづらさや、つま先が圧迫される痛みも男性が分からないことで強制され、放置されているのかもしれない。
こういう話題に対し、男性も革靴が辛いという意見が出ているのをよく見るが、辛さを競い合っている暇があれば、一緒に快適を目指そうという方向に舵を切って欲しいと思う。
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私が足が痛いと電車で嘆いた数年後、KuToo運動(「靴」と「苦痛」を掛け合わせ、女性に対する職場でのハイヒール強制の禁止を求める運動)が起きた。就活にその波は来ていないようだが、少しずつ女性の足元事情は改善しているようだ。
女性の足元事情が、早く、昔は大変だったなと言えるように、過去の出来事になって欲しいと願っている。
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