あなたは自分の声が好きですか。
私は正直、好きではない。でも貫禄はあると思っているし、落ち着いた声ではあると思う。

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産声からして低かったらしく、母曰く「あんただけ他の赤ちゃんとキーが違くて、低い声で泣くからすぐわかった」と。

先日試しに、高く女の子らしい声を出して彼氏の名前を呼んでみたら、やっぱり「そっちの方がキュンとくる」と言っていた。

後から「普段とのギャップでね」と付け足していたけれど、好きなんだろうかと思う。

中学校に入学してすぐの音楽の授業で歌のテストがあった時、高い声が出ずに裏返ってしまって恥ずかしい思いをしたこともあった。

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声が低い女性は生きにくいなと、その時に思った。私は、私の声は、社会に求められていないんだとショックだった。低いなら低いなりの歌を、パートを与えてくれたらいいのにと思ったが、勇気がなくて主張することはできなかった。あの時主張していたら変わったんだろうか。後悔先に立たず。

でも、学校に行かなくなって聴き始めたレディ・ガガやケイティ・ペリーは低くても魅力的な声をしていたし、それが支持されていた。彼女達の存在によって、自分の声も悪くはないかと思った。

テレビを見ているとアイドルや女優さんの高く可愛らしい声が部屋に響き、羨ましくなる。ショッピングの際も、「いらっしゃいませ〜」という店員さんの高い声に、いいなぁと思う。

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そういう女性になれるように努力して一時的には変えられても、元々天から与えられたものというのはなかなか変えられるものではない。

いくら原因探しをして嘆いたところで現実が変わるわけではないのだから、ひっくるめて愛すしかない。

アイドルや女優さんの中にも落ち着いた低い声の女性はたくさんいる。そして、私の大好きなロックスター・椎名林檎氏も、トークの時はハスキーな低い声で話す。

ニュースを見ていても、声が低いアナウンサーの方が説得力が増すなと思ったりもする。特に重いニュースの時は。

私が小さな頃に触れていた文化の中では、低い声の女性はどうしてもサブ的な扱いを受けていた。

女性キャラでメインをはって、チヤホヤされているのはいつも高い声の持ち主だった。

低い声は悪役だったり、冷徹キャラにされる場合が多い。実際そういう印象を与えてしまうのだろう。

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承認欲まみれの私はきっといつだってチヤホヤされたいのか、それに憧れては、なれないことにイライラしてやるせない気持ちになった。

でも、低い声には低い声なりの、そして私なりの良さがあると年をとるに従って思えるようになってきたと思う。カラオケで昭和歌謡を歌ってもサマになるこの声は、現代じゃレアだと思う。

自分の声を愛していこう。