暑い日の仕事終わりのビールとか、チートデイの焼き肉とか、「◯◯のあとの◯◯」という概念は、年齢問わずにあるような気がする。

私のそれは、遡ること20年前。小学生の時に覚えてしまった。プールのあとの、カレーパンとあんぱんとソフトクリームだ。

私は昔から体育が苦手だった。苦手な理由は、以前にも書いたことがあるので省略する。それでも水泳だけは得意だった。習ってた訳ではないが、何故か泳げた。
小学校の夏の体育の主戦場はプール。度々テストがあり、クリアすると級を与えられる。得意といっても、クロールと平泳ぎができる程度。タイムもそこそこ。それでも、できない体育の種目よりは楽しく過ごせた。

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何故か泳げた理由はわからないが、母が区民プールに連れていってくれてたことが1つの要因かもしれない。家から自転車で約30分。夏の炎天下を走って、プールでクールダウン。でもがっつり泳ぐから、帰路はヘトヘトになっていた。

小学生には深すぎる水深の、全長30mのプールに果敢に挑んでいた。途中で力尽きて、何泳ぎかわからない泳法でとりあえず端まで行ったり。誰に習うでもなく泳ぎを覚えた。

「そろそろ帰ろう」と言われても、「嫌だ」と言って母を困らせることもしばしば。そんな時の魔法の言葉が、「上でパン食べよう」だった。

上というのは、その施設の2階を指す。1階にプール、2階にトレーニングルームとちょっとした売店があった。その売店で売られていた、何の変哲もないカレーパンとあんぱんが好きだった。

本当にどこにでもあるパン。だが、疲れた身体にとてもみる。紙パックのいちごミルクまたはコーヒー牛乳と、カレーパンまたはあんぱん。お腹も空いているからか、より美味しく感じた。

「売店のパン」というのも良い。今はどこも小綺麗なお店が多いけど、雑多な品揃えの"売店"であるところが良い。最近は行ってないからわからないが、あの頃のままの売店であってほしい。

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疲れた身体にエネルギーをチャージして、HPを回復させいざ帰宅。といきたいところだが、これから約30分かけて自転車で帰る訳である。夏の夕方は夕方でない。家に着くまでにバテてしまう。

そこで私達は寄り道を覚えた。プールと家のちょうど真ん中にイトーヨーカドーがあった。その3階にちょっとしたレストランが存在した。スーパーは冷房が効いていて、お休み処にちょうどよかった。

このちょっとしたレストランで食べる、「カラフルなチョコスプレーがかかったソフトクリームサンデー」が格別だった。確かあんみつなどもあって、和のデザートが好きな母がそれを食べたいために寄っていたのだと思う。

プールの売店でアイスを食べることもあったが、ヨーカドーでソフトクリームを食べることを考え、「ここでは我慢だ」と自分を制していたこともある。カラフルなチョコスプレーがかかっている点がミソで、普通のサンデーが豪華なものに見える。

それこそ普通の味なのだが、疲れた身体にみる。ソフトクリームの温度で冷やされ、チョコに少し固さが出てるのも良い。下にはコーンフレークが敷かれていて最後まで飽きない。味こそ普通なのだが。

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今はもうスーパーが潰れて、もちろんちょっとしたレストランもなくなってしまった。もし今存在していても、食べて懐かしく思えるのだろうか。売店のパンも、どんな味だったかと聞かれたら、「みんなが思うカレーパンとあんぱん」としか言いようがない。

例えば今、「これがあの売店で売られていたパンです!」と言って出されても、「これだっけ?」となるだろう。あくまでも「プールのあと」だからこそ感動的だったからだ。こんなことを言うと製造者の方に申し訳ないので、とても美味しかったことはちゃんと記しておく。とても美味しかったです。

きっともう味わうことが出来ない味達。その代わりに、仕事終わりのビールや、我慢して解禁した焼き肉の味を覚えるのだろうか。

思い出は思い出であって、今また出会えなくてもいいのかもしれない。だからこそ今でも日常的に、カレーパンやあんぱんを食べることができているのかも。