「あなたに価値はありません」
就職エージェントのスタッフに言われた言葉です。
私は全身の筋力が弱い病気なので、身体障害者手帳を持っています。車椅子を使って生活していますが、それ以外は他の人と何ら変わりのない普通の人です。車椅子を使っているため、会社で働くとなると配慮事項がいくつか出てくることが予想できたので、一般雇用ではなく障害者雇用を狙って就活していました。
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大学四年生の頃、就活準備が少し出遅れたという焦りがあり、少しでも挽回できるよう、就職エージェントを利用することにしました。WEB登録をした後、履歴書やガクチカなどをまとめた簡単な質問シートを提出し、提出した資料をもとに面談がありました。履歴書と質問シートの提出までは順調でした。
面接当日は、新型コロナの影響でオンラインで顔合わせをしました。担当のスタッフは人当たりのよさそうな方で、こちらの緊張をほぐしてくれるような雑談も交えながら、和やかな雰囲気で面談はスタートしました。大学名の確認、ガクチカ、資格や特技など、履歴書と質問シートについて一通り確認をした後、希望の雇用形態と職種の話になりました。
身体のことを考えて、障害者雇用でやりたいことができたらいいなと考えていたので、正直に希望の雇用形態と職種を話したところ、スタッフは険しい顔をしました。そしてゆっくりと口を開き、「大変申しあげにくのですが、あなたに価値はありません。なので弊社からは仕事の紹介は難しいです」と言われました。
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頭が真っ白になった私は涙を堪えながら、なぜ価値がないのか聞いてみました。理由は、一般雇用で就活するなら全く問題ないスキルや経験ではあるが、障害者雇用は狭き門のため、有能な人でないと採用してもらえない、とのことでした。就職先の紹介は難しいため、登録は解除することを伝えられ、そのまま面談は終了しました。
その日から私は、悔しさや悲しさで毎日泣き続けました。次第に、なぜ価値のない人間になってしまったのかと自分を責めるようになり、メンタルクリニックへと通うことになりました。家と大学と病院の往復が精一杯になり、結局就活はやめて、内定がないまま卒業することになりました。
無職のまま、大学を卒業して初めてのゴールデンウィークを迎えたとき、人生の転機が訪れました。
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偶然、SNSでとあるオーディションを目にしました。パリコレオーディションです。なぜかとても心が惹かれました。大学時代、芸能事務所に所属しながらタレント活動をしていたこともあって、モデルの経験は少しですがありました。なので、勇気を出して応募してみることにしました。
すると、なんと最終審査まで残ることができました。結果としては不採用になりましたが、ブランドの人からは「次は一緒に仕事をしよう」と言ってもらえたので、その言葉を信じて、モデルになることを決意しました。
パリコレオーディションに落ちた悔しさをバネに、どんなに小さな仕事でも一生懸命こなしていきました。すると、一年後、本当に先述のブランドからファッションショーに出ないかと声をかけてもらいました。
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必要とされていると感じて、とても嬉しくなりました。さらに、モデルとして色々な方面の仕事を地道に頑張り続けてきた結果、ひょんなことから大学時代にやりたかった職種の仕事もできるようになりました。
大学時代の就活は本当にしんどかったですが、今は私を必要としてくれる場所で楽しく働けています。価値のない人なんていません。自分の価値を存分に発揮できる場所がどこかに必ずあるということを身をもって経験することで、就活の時に負った心の傷は癒えていきました。
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