物心がついた頃のことから覚えている。
目の前の相手が話すことをうんうんと笑顔で聞くだけしかできず、面白い返しや気の利いた発言ができない。大人数が苦手で、輪の中では悪気なく黙ってしまう。
好きなものや興味のあるものも全く違い、周りの好きなものを好きとは思えなかった。好きではないものを好きになることはできない。

小学校6年生のある日ふと思った。嫌われるだけならもうすべてやめよう。
合わせて笑うことや、無理に輪に入ることや、頑張って遊びに誘うことも

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そこからは学内でなんとなく仲良くなった友達ができたり、できなかったり
できても嫌われたりしてもはや見慣れた風景になってしまった。
寂しくなかったといえば嘘だったが、私には意地しかなかった。
1人で生きていける。周りと違う存在になる。という徹底した意地だった。

そのくせ恋愛では真逆で、誰かと付き合っても自分の気持ちを表すのが下手だった。
寂しい気持ちを我慢したことや元来の内気な性格もあり、気持ちをすべてぶつけてしまうことしかできなかった。

相手が何を思ってその発言をしたのかの背景を考えることはできなかった。
とにかく必死だった。自分が何を思って何を伝えたかったのか、理解してほしかった。
しかし相手はそんな私に愛想をつかして去っていった。
そこでも意地しかなかった。決して後を追わないという徹底した意地だった。

最初は仲良くなれても、最後は必ず永遠の別れになってしまった。
それでもいつか自分のことを理解してくれる人がいたらいいなと思っていた。

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そんな時、新卒入社してきた彼と出会った。
私は彼より6歳も年上で社内では気難しいことで知られているいわば「関わりにくい先輩」だった。

しかし後に仕事を通じて彼から告白されて付き合うことになった。

付き合いだすとやはり自分の気持ちを伝えることだけに必死になってしまった。
他にも彼の気持ちを疑ったり、ありとあらゆることを不安がった。それは彼を失いたくない反面、どこかで彼に甘えていたのかもしれない。自分の思っている気持ちを言わずに察してほしい、王子様でいてほしいという願望だったのかもしれない。

彼はそのたびに何度も何度も気持ちを伝え、理解しようとしてくれた。
私もそんな彼を見て自分を少しずつでも変えようと思い、努力してきた。
気持ちを伝える時間を決めたり、相手の話をしっかり最後まで聞くことを徹底したり、言われて意味が分からないことはどういう意味かを確認したり。

察してほしいではなく、自分がなぜその意見になったのか。どういう気持ちだったのかを少しずつ伝えることを繰り返した。

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付き合いたての頃、悩みを言い出せず8時間かかったこともある。
言いたくても言い出せない。焦って更に言えなくなるのを繰り返してきた。
思えば物心ついた時からそうだった。あの時から私は何も変わっていなかったのだ。

今も決してできるようになったとは言えないが、言いたいことを言えるまでの時間も短くなってきた。言い出すまでの時間は8時間から15分への大進歩である。

しかし伝え方や受け取り方は、まだまだ上手にできない。
それでも彼は一緒に頑張ろうと声をかけてくれる。
お互いできないことは分担してやっていこうと伝えてくれる。

人間関係にまだまだ苦手意識はあるけど、応援してくれる人がいる。
もう一度踏み出そう。