コロナ禍が明けて、彼氏がいなかった私を見かねて、友達が職場の同期を紹介してくれた。
頭が切れて、会社の中で信頼を置かれてる人だという。
ほどなくして2人で出かける約束をした私は、久しぶりに胸が高鳴る感覚を味わった。
◎ ◎
2回目のデートだったと思う。
待ち合わせ場所で私を探している様子を遠くから見て、急に冷めた。
待ち合わせ場所に私を探しに来てくれたのは彼だというのに。 私が後ろから声をかけるまでたくさんの人混みの中で、私の姿を探してくれた。
それなのに なんとなく嫌だと思ってしまった。
これまでの経験で急に何かの行動が、生理的に無理になることはなかったので、私は照れ隠しをしているのかと思った。
コロナ禍で久しぶりになったデートに戸惑っているだけかと思った。
しかしそうではないことに気づいてしまった。
好きなタイプの顔だし、真面目な性格で嫌になる理由なんてない。
頭ではそう分かっているのに、心は彼との関係を進めることを拒否した。
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非常に理不尽で身勝手だが、蛙化が止まらなかった。
蛙化という言葉が出てき始めてすぐの出来事だった。
蛙化という現象に陥ったことがある人なら分かると思うが、一度無理だと感じてしまうと、好きな状態に戻るのは相当難しい。
それでも2回目のデートは違和感を抱えつつも、楽しく終えることができた。
流れで3回目のデートの話になった。
3回目のデートは2ヶ月先の予定だった。
もしかしたら、この間に好きという気持ちが復活するかと思って少し期待した。
そして、私のことを気に入ってくれている彼のことを好きになれない自分を責めた。
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一抹の望みをかけた3回目のデートだったが、昔やんちゃしていたエピソードを聞いて、初回のデートでは微笑ましく感じていたのだが、 一度蛙化した後に似たような話を聞くと、子供っぽいなという感想に変わって自分でも驚いた。
自分でも心変わりに戸惑った。顔に出て、彼を不快にさせていないことを願う。
3回目のデートもつつがなく終わり、4回目のデートの日はいつ予定が空いてるか聞かれた。
また私と出かけたいと思ってくれている彼に感謝の気持ちを心の中で伝えつつ、さすがに「蛙化が止まらないので、もう会えません」とは言えず、「しばらく忙しい」と返信した。
彼は私の体調を気遣ってくれ、期待に応えられないことに罪悪感が増した。
仕事が忙しい時期だったのは事実であるが デートができないほどではなかったので、心の中で何度も懺悔した。
紹介してくれた友達にも申し訳なかった。
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蛙化した原因は、勝手に友達の言葉から推測した彼に、さらに私の作り出した理想を重ね合わせてハードルを上げていて、一緒に過ごす時間が増えていくうちに、その作り出した理想像と本当の彼との間にギャップを感じたからだと推測する。
例えば、友達は彼のことを頭がキレると言っていたが、私の前ではどちらかというとほんわかしていた。
ほんわかしている彼も好ましかったが、作り出した理想像とは違った。
彼がこの真実を知ったら、勝手に理想像を押し付けないでくれと苦情言われそうだ。