「う~ん、これおいしい!」

2人で食事をしていて、これを言われた時は、だいたい会話が煮詰まっている時。
2人の男女が、おいしい食事やテーブルを挟んで、本当はあと一歩、お互いの関係性に踏み込みたいと思っている時。
「近づきたくても近づけない」、なんとなく、知り合って間もない2人の間に緊張と願望が流れている時。

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先日、最近気になっている彼と博多で食事をした。知り合って2回目の食事で、彼は東京、私は九州地方にいる遠距離だ。博多は、そんな2人の中継地点である。
1回目は、都内の駅チカのイタリアンで食事をした。
現代風にマッチングアプリで出会い、何通かメッセージした後、営業マンらしく「食事でもどうですか?」と私から彼を誘った。初対面の食事の時間が温かい雰囲気で終わったからか、帰り路、夕闇につつまれた新宿駅の改札前で、彼の方から「連絡先を交換しませんか?」と声をかけられた。

正直、一緒にピザやサラダを食べている時間よりも、新宿駅までの2人の短い帰り道の時間の方が、私は幸せな気分だった。

「本当、いちえさんってお店みつけて予約されるの早いですね

ほめているのか、稀有な目で見られているのかわからない、そんな言葉をこれまでマッチングアプリで実際に会ってきた何人かの男性陣から言われた。

「私、ずっと営業なので。仕事でずっとやってきたんです....」と明るく笑ってその場をやり過ごすことが多い。明るい、明朗闊達、素早い、相手の発言の小さなことは気にならない、気にしない...….。それが、新卒からずっと営業を続けている私の性分だ。

その後、決まって「今度は自分がお店探しますね」と、しれっと2回目の食事をセッティングされることが多かった。

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ただ、今気になる彼は、これまで会ってきた男性達とは違う。明るそうに見えて、どこか奥手で、本当はすごくインドアで1人が好きで、気になる相手の発言や態度は、一つ一つ自然と気になって、自分で開き直ってを繰り返して生きている....……。そんな、本当は繊細で優しい人柄に感じた。でも、それは2回目の博多での食事の時に、知た。

「私、本当は全然しゃべらないんです。幼稚園の時から女子高で、食事中は私語禁止……という校風で」いままで大学名と仕事についてしか話していなかったが、初めて生い立ちについても話した。
2回目の博多での食事では、岩ガキやのどぐろなどが出てきた。駅前の繁華街から少し離れた閑静な場所にある小さな日本料理店だったのもあり、じっくり料理を味わえ、ゆっくり正直にお互いについて話せた。もしかしたら、1回目の食事の時より、2人の間に信頼関係ができ始めているからかもしれない。

1回目は、東京のきらびやかなイタリアンでお互いをPR(魅せ)。2回目はしっり福岡で本性を見せ始め……。3回目は、8月にまた東京で会う約束だ。

次は、どんな展開なのか、今から待ち遠しい。