私は今も、私にとって大切な恋人以外の男性を想っては胸を締め付けられている。

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初めて好きになった人は、ミステリアスで、シュッとした顔だったが、よく冗談を言い、笑うと目尻が垂れて優しい顔になる人だった。学校で一人だった私によく声をかけてくれた。

優等生のレッテルに縛られて、誰に聞くこともできず密かに格闘していた数学の問題を、いとも簡単に、当たり前のように教えてくれた人だった。自分の性格的に彼女がいるのがしんどいと言われて失恋した時は、胸に大きなものがつかえて苦しかった。

今は、その時と同じようには苦しめない。あの時と同じようには、ドキドキすることもないし、高校卒業と共にお互いに地元を離れたから、あれだけ好きだった優しい笑顔も、いつか私に向けてくれた笑顔を、記憶の中で何度も再生するだけだ。

今の気持ちが相も変わらず恋なのか、それともただ幸せだった記憶にすがっているだけなのかすら、私には判別することができない。ただ、もう戻れないのか、この先、誰かと付き合うことなんてできるのかと悩み続けていた頃とは違って、今の私はただ、この気持ちが恋じゃないと信じたいと思っている。

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今の私には、恋人がいるからだ。苦しいばかりの恋に疲れて、好きだけじゃダメだったんだと知り、また、そう思い込みたかった時、今の恋人に告白された。私は人として、その人が好きだった。一緒に学園祭のリーダーをした。それまで、リーダーをしても周りは私を煙たがるばかりで、誰も私に寄り添ってくれなかったけれど、彼は、私と同じ歩幅で、私の隣にいてくれた。

むしろ私の手を引っ張るくらいの勢いがあって、その時初めて、私は一人ではないと思えた。でも、それはあくまで、最高のパートナー、仲間という認識だった。だから、断ろうと思っていた。なのに、「好きです。付き合ってください」とストレートに言った彼の目があまりにも真剣で、私は思ってしまった。この人は私さえいれば幸せでいてくれるんじゃないだろうか。この人は「好き」だけで、幸せになってくれるんじゃないかと。気がついたら、私は首を縦に振っていた。

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それから、彼は私の光だった。ドキドキすることはない。一般的に言われるような甘い恋じゃないとはっきり分かる。友だちの少ない私にとっては、少なくとも一人、無条件で私を好きでいてくれる人がいるというのは大きな救いだった。

もちろん、彼と同じ意味での「好き」ではないことに罪悪感らしきものを感じることが無いわけではなかった。けれど、最初から同じ気持ちになれないと分かっていたのに、今更それを彼に打ち明けるのは少なくとも私にはより酷だと思えた。良心の呵責は私の荷物だ。だから、せめて誠実であろうとは自分に誓っていた。元カレに連絡したことなんてない。

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私なりに、今の恋人に誠実であり続けたつもりだった。本当に、それがただの“つもり”、自己満足でしかなかったらしいというのを突きつけられたのは最近になってからだった。元カレも今の恋人とも面識のない、大学生になって知り合ったバイト先の人に復縁に関しての相談をされた時、自分の話をした。関係のない人だから口が軽くなった。すると、彼女は私に言ったのだ。「それは浮気じゃないの?」と。

今までの5年が全て否定されたような気がしてしまった。ベストではなかったかもしれないが、もう誰の荷物にも、負担にもならない、より良さそうだと思える道を選んできたつもりだったのに。恋人がいるのに、元カレを忘れられないのは浮気だろうか。私は彼と連絡すら取っていないのに。

恋人のためだけに生きられない私は、あの頃から少しでも、先に進めていることを願いながら、何も知らない恋人の隣で、今までと同じように微笑んでいることしか、今はできない。