今年の4月から改正DV防止法が施行された。地元のニュース番組でもそれが取り上げられた。我が家にはテレビがないのだが、テレビ局のHPでそのニュースを見られた。

身体的暴力のみならず精神的暴力からも被害者を守る形で法律が改正されたので、精神的暴力とはどういったものなのか、という部分に焦点を合わせた内容だった。地元支援団体と弁護士の専門家たちに取材をし、具体例を挙げながらで、分かりやすかった。

なにより、専門家の解説が終わった後、男性アナウンサーが「被害者は女性だけではなく、男性の場合もあります」と紹介していたことがとても良かった。

「DVをするのは男性で、被害を受けるのは女性」という決めつけは良くない。その先入観のせいで、自分が被害を受けていると気づけない男性もいるだろうし、被害を訴えても聞き入れてもらえず、二重、三重に傷つく男性もいるだろう。

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ニュースの最後には地元の相談窓口が紹介された。トップには県と県庁所在地が設置している窓口が並んでいたのだが、いずれも「女性相談」や「女性への暴力」というような名称だった。

その相談窓口が女性のためのものであることがあきらかだった。いや、さっき、男性も被害者になることがあるって言った次の瞬間にこれは、私が男性だったら、やっぱ女性だよねってがっかりしそうだけど。

などと思いながら、一緒に見ていた恋人(男性)を見やると「つまりはそういうことです」と哀愁を漂わせながら言われた。取材を受けていた支援団体や他の自治体の福祉や子育て支援の部署、警察の生活安全課も紹介されていたものの、「女性」と付いた名称の相談窓口のインパクトは大きい。

これは地元テレビ局は悪くないと思う。私は専門家ではないので、素人の意見ではあるのだが、誰も傷つかないように、1人でも多くの人が適切な支援につながるようにとの思いで作られたのかなという印象を受けた。かなり良くできていたと思う。ただ、行政の支援や制度が追いついていないのだろう。

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私は年齢の割に市報の類をよく読むのだが、たまに「男性のための相談窓口が開設されます」というお知らせを目にする。その相談窓口は期間が定められている。つまり常設では男性のための相談窓口がないのだ。

私は色々と困難を抱えているので公的機関などに頼ることがある。しかし、この困りごとにはここに相談に行けば良いと見極めるのは難しい。そういう時に「女性のための」「男性のための」「障害者のための」などといった間口の広い窓口の役割は大きい。然るべき場所につなげてくれるからだ。勇気を出して相談に行ったのに、担当じゃない部署に尋ねてしまい、冷たくあしらわれることも防げる。

そして、専門家はその困りごとの専門家ではあるが、その属性の専門家ではないことがある。困りごとの内容以前に、男性が怖いという女性もいるし、相談に際し配慮が必要な障害者もいる。男性が怖いと伝えているのに男性がすぐそこにいるとか、障害に対して配慮のない対応をされたとか、男のくせにという態度で応対されたなど、困りごとを解消する前に、今まさに困っていますなんて状態が発生しかねない。

私もそれでダメージを受けたことがある。それは防げた不必要なダメージだと思う。性別や障害の有無、種類など、属性が限定された間口の広い相談窓口を挟むことで、そういったことを防げることがある。それは二度手間ではなく、ワンクッションになるのだ。

そもそも自分が何に困っているかわからないこともある。そういう時、間口の広い相談窓口は頼もしい。何が辛いかなどの現状を相談することで問題の発見や整理に繋がり、解消につながることがあるからだ。

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男性が男性というだけで支援から漏れることのないようになってほしい。私が女性だから関係ないなんてことはない。支援の網の目が細かくなって、こぼれ落ちる人が少なくなった社会は、社会全体として生きやすさが増しているだろうから。