ゴール時の、あの、なんともいえない達成感。

まわりの声援、こめかみを流れる透き通った自分の汗、大空のもと、知らない土地をひたすら突き抜けるようにゴールに向かって走り続ける数時間。

社会人になってから、私はマラソンデビューをした。

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それまではずっと文化系で、運動とは無縁だった。でも、転職して初めて地方に来て、週末にやることがない。
そして、家のドアを開けると、すぐ目の前広大な湖が開け、その周りがきれいに整備された道がある。

そんな環境だったので、2年前から、フルマラソン大会に出るようになった。

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最初は、ダイエット目的で1日45分、軽いジョギングをしているだけだった。
ところがある時、会社の女性の先輩に「フルマラソン大会やるけど、出ないの?」と声をかけられた。
そこから、初めてマラソン大会にむけた練習をするようになった。

スポーツと無縁な人からは、「フルマラソンに出るなんてすごい……考えられない……」とたまに言われたりするが、私からすると、時間を気にしなければ、フルマラソンを完走すること自体にそんなに構えなくてもよいのではないか、と思う。

ダイエット中でも、極度の食事制限をやめて、しっかり炭水化物を食べ、大会前にカーボンローディングすれば、本番中はゴールが意外とあっという間だったりする。

それは、私が20代後半という年齢だからでもあるし、やっぱり大会当日のフェスティバルな雰囲気や声援は、ランナーに「42kmも走った」という実感を与えにくい気がする。

それくらい、地方を1人で走る練習と、知らない土地を駆けぬける大会当日は、活気や楽しさが違う。

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フルマラソンを始めると、周りからも「そんなに走るんですね」と驚きともに褒められることが多いし、なんといっても体重管理が安定するようになった。

これまでは、体重の増減が周期的にあったが、マラソンを始めてからは、一貫して健康的な体型をキープできている。
食事も気をつけるようになり、肌の調子も良好だ。もちろん手足は筋肉質になるので、スタイルを褒められるようにもなった。

大人になり社会人4年目になってから、自分らしいスタイルをプロデュースできるようになった気がする。
学生時代のように、「ただ細ければいい」というわけではない。
自分のオーラや顔立ちから似合うファッションを選ぶようになり、姿勢良く、ナチュラルでメリハリのある健康的な体型を持てるようになった。

やはり20代後半なので、女性らしいほどよい肉付きやボディラインは、成人女性として大事にしたい。

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マラソンにより、「(受験や仕事などのストレスで)太った…」と長年コンプレックスだった体型や局所が、ちゃんと自分の体の一部として、なんだか愛おしくなった。

女性として、歳を重ねるほど、魅力的に魅せられるようになった感じがする。

それくらい、大人になって新たにつくったマラソンという趣味は、私に自信や仲間、健康、豊かな話題や発見を与えてくれるものとなっている。

いまや自分にとってのフルマラソンは、もともと旅行好きだった私を更に、大会で全国各地の知らない土地へ行くきっかけにもなり、有意義な人生の一助となっている。