「生きるってなんだろう」。私は数年間ずっと考えていた。

別に死にたいわけではないが、死ぬのが嫌ではなかった。恐怖もない。仕事は面白くはなかったが、定職に就いていたし、給料も一般的な暮らしなら問題ないぐらいあって、親友といえる友と仲の良い家族がいる。恵まれた環境だ。なのに、何に不満があり死んでもいいと思っているのだろうか。特に寝るときはそんなことをよく考えていた。

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そんな時、会社で異動の話がきた。現職場は、正直言って前職場よりも楽だ。仕事はほぼ定時で終わるし、疲れ具合が違うため、自分にエネルギーが残った状態で自由時間を迎えることができる。

初めは新参者として飲み会にもよく参加したし、職場の人と休日に遊びにも出かけた。でもある時から、本当に行きたい飲み会、本当に会いたい人にのみ会うようにしてみた。

昔から私は断れないタイプだった。本当は憂鬱な気持ちを抱きながらも参加し、その場のノリに合わせてボケとツッコミ、笑顔を浮かべて、その場の雰囲気を重要視する。そして帰宅後どっと疲れて、参加したことを後悔。次は行かないと誓う。そして次の誘いにまた出向いている。

ずっと本当の自分に正直になりたいと思ってきた。職場が変わり私のことがまだあまり知られていない、このタイミングがベストであった。ちょいちょい誘いを断っても、特に変に思われることもなく、現在は自分の時間を確保できている。

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自分の時間で何をするようになったのか。それは自分との対峙である。まずは、おもしろくないと思っている仕事を変えたいと思い、転職を考えた。私は何がやりたいのか。なぜおもしろくないのか。適職を見つける類の本を読んだり、転職時に使えるというワークシートに取り組んだり、自分を見つめていった。

今までやってきていないのだから、そう簡単には仕事でやりたいことも強みも見つからない。1冊や1種類のワークシートでは見つけることはできず、俗にいう自己分析は数か月に及んでいる。転職サイト等では数週間で終わらすように書いていて、私には到底できなかった。

やりたいことを仕事以外で考えてみた。趣味としてやりたいことならあるぞ!とやりたいことがどんどん浮かび、日に日にワクワク感が高まってきた。以前の私は、やりたいことをやる元気がなかったが今の私は違う。なんたってエネルギーは余っているのだから。

テレビで見たダンスに興味がでたので、スクールを探して体験レッスンに参加した。なんか思っていたのと違うなぁ、うーん向いてなさそうだ、やめておこう。次に前から気になっていた歌をやってみた。楽しい!続けたい!入会を決意した。次は…文章を書いてみたい。ネットで検索していざ出陣。これが初投稿である。

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転職しようと考えていたのに、なかなか転職活動が進まない。趣味ばかり充実していっていて、現実から逃げているのではないか。転職の本に「辞める前に全力で今の仕事をやってみろ」というような記述があった。よしやってみるかぁ。小さなプロジェクトの一員になった。真剣に取り組んでみよう。なんだか面白いじゃないか。あれ、やろうと思えば面白いことに自分から関わっていけるのではないか。私、転職したいんじゃなかったけ??

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ここ最近「生きるってなんだろう」と考えなくなった。明確な理由はわからないが、私は自分と向き合う時間ができたこと、そして人生でやりたいことが見つかり、それを少しずつ実践しているからだと思う。今はまだ趣味としてのやりたいことだが、そのままでもいいし、そのうち仕事としてやりたいことが見つかれば、それでいいと思っている。自分に素直に。そして少しずつ前進していく。「生きる」ことに少し前向きになってきている。