私が理系を選ばなかった理由。それは、数学と生物、化学、物理、要するに理系の科目が苦手かつ大嫌いだったからという消極的なものだった。
私は幼い頃から英会話を習っていたこともあり、学生時代は英語が一番得意だった。英語は文系でも理系でも大いに関係する科目なので、どちらを選択してもさほど大きな影響はないと思っていた。しかし、当時高校生の私にとって苦手な科目が多い理系を選択するなど全く眼中になかった。また、「将来は〇〇の仕事に就きたい」といった具体的な将来像もなかったので、私は何の迷いもなく文系を選択した。それは当時の私にとって、もはや当たり前の選択だった。
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そして、私は大学に進学し、英語系の学科を専攻した。大学に入ってからは英語や英米文学・文化に関する授業が中心になった。私は英語が好きで英語系の学科に入学したが、入学当初はあまりにも英語漬けの日々に気が滅入っていた。大学を入学して数か月も経たないうちに学科選択を間違ったかもしれないと焦った。
大学1年の夏休み、英語系の学科から日本語系の学科に進路変更するか真剣に考えていた。しかし、私はやはり英語が好きだったので進路変更はせず、そのまま置かれた環境で4年間過ごすことに腹をくくった。
相変わらず授業の課題が多く、休日に時間をかけて取り組むことも多かった。大学で様々な授業を受けるにつれ、私は大学生活の「目標」が見えなくなっていた。大学で英語や英米文学・文化を学んでそれをどのように自身の人生に活かしたいのかわからなくなっていた。
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私は大学受験の時、英語が好きという気持ちだけで学科を選んでいたことに気づいた。決して文学は好きではなかったし、将来は英語を活かした仕事に必ず就きたいと決めている訳でもなかった。そう気づいた時、過去の母の一言をふと思い出した。
私は大学の学科を選ぶ際、社会系の学科に進学することを少しだけ視野に含んでいた。母は英語系の学科ではなく、社会系の学科に進むことを勧めた。将来、具体的にやりたことが決まっていないなら、社会系の学科で広く社会の仕組みについて学んだ方が今後の視野が広がるとアドバイスしてくれた。しかし、当時高校3年生だった私は母の意見を聞き入れなかった。その結果、大学入学後に具体的な目標を見失ってしまった。
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私は高校生の時、文系を選択したことに後悔はない。しかし、当時を振り返ると自分が文学が好きでないことに真正面から向き合っていなかった。理系の科目が苦手だから文系を選択するしかないという思いの一点張りだった。あの時、文系を選ぶという結果は同じであっても、しっかりとした理由付けがあれば大学進学時の学科選択が変わっていたかもしれない。
私は英語は好きだが、文学は好きでないことをしっかりと認識していれば、違った進路そして人生を歩んでいたかもしれない。たとえ大学は同じでも専攻する学科が違えば、学ぶことも出会う人も大きく違っていただろう。たかが文理選択かもしれないが、人生を左右する大切な決断の1つと言っても過言ではないのに私は軽んじていたと反省している。
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フィーリングで選択することは決してダメな訳ではないが、単なる「好き」や「嫌い」といった気持ちだけで文理選択をしてしまったことは浅はかだった。決して、消極的な選び方が必ずしも間違っている訳ではないが、逃げるような選択をするのではなく、真正面から課題と向き合い、自分の選択にはしっかりと責任を持つのが肝要だと考える。時には決断を誤ることもあるだろうが、これからは胸を張ってその時々の最善の選択ができるよう意識していきたい。