私がマチアプをインストールしたのは、3年前くらいのこと。ただインストールしているだけの状態がしばらく続いた。

実際に使い始めるまでに1年もの空白期間があった。この1年間、私にとってマチアプは「お守り」的な存在だった。

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3年前、私には恋人がいた。私を躊躇なく殴る人だった。機嫌の悪さで私をコントロールする人だった。いまはこうやって冷静にその人のことを書けるけど、当時は違った。

恋人のことが怖かった。でも離れようとするのはもっと怖かった。こんな私と付き合ってくれるのはもうこの人しかいないと思ってしまっていた。

いつか幸せになりたい。私のことを殴らない人と付き合える未来がきっとある。そう思いながらも現状を変えるような行動は取れず、悶々とした日々を過ごしていた。

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きっかけは、友人がマチアプで出会った方と結婚をしたことだった。これまたとっても素敵なお相手で、うらやましい気持ちでいっぱいになった。そこでマチアプというものの存在を知り、「この世にはどんな人がいるんだろう?」という気持ちでインストールしてみた。

自分のプロフィールは何も設定せず、もちろんいいねを押すこともなく、ただの閲覧用。いざとなったらコレを使って違う人と出会える。そういう心持ちでいたかった。 

当たり前だけど、いろんな人がいて、見ているだけでも楽しかった。この人はこんな仕事をしているんだ、こうやって自分をアピールするんだ、好きな物を好きだと言えるのってすごいなあ。キラキラとした別世界を見るような感覚だった。

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私も、別世界の中にちょこっと入ってみたい。そんな軽い気持ちで、写真を設定し、プロフィール文をほんの2、3行書いてみた。プロフィールを設定した瞬間、いいねの嵐でびっくりした。

いいねだけする人、こちらがいいねを返すとすぐメッセージをくれる人、こちらがプロフィールを覗いただけなのに「覗いてくれてありがとう」とお礼を言ってくる人。出会う前の様相もそれぞれで、本当に楽しかった。

「○○さんの優しそうな表情に惹かれました」
「趣味が似ていて、もっと話したいと思いました」
こんなふうにまっすぐに言葉をかけられたのも新鮮だった。嬉しかった。

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結果的に、実際に会うところまでいった人はいない。でも、まっすぐに言葉をかけられたり、目に見えるかたちで「いいね」を押してもらったりすることで、自分の気持ちの核が少しずつ形成されなおされていくようなそんな感覚になった。

もしかしたら私は、殴られる必要はないのかもしれないな。そう思った。マチアプのおかげで、私は恋人と別れる勇気が出て、無事にお別れすることができた。別れ際に嫌なことを言われたし、ちゃんとぶん殴られたけど、それでも「ここで終わるわけにはいかない」と思ってガマンした。

少し他の人とは使い方が違うかもしれないけれど、マチアプには本当に感謝している。マチアプのおかげで「別れる」ことができて、いまの私がある。

いつかまたいいご縁がありますように。また、マチアプにお世話になることがあるかもしれない。今度は「出会う」ために。