私は、飲食店でアルバイトをしている。
通年人手不足の我が店舗では、店内に求人募集のポスターを一年中掲示しているのだが、最近、海外から移住してきた方たちのアルバイトの応募が増えてきた。実際に採用された方も数名いらっしゃるのだが、それが今、少しばかり困ったことになってしまっている。誰も、彼らとコミュニケーションを取ろうとしないのだ。

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いい子ちゃんぶる気など更々ないが、私は、彼らとコミュニケーションを取ることをさほど苦とは思わない。高校生時代に、英語に触れる部活に所属していたこともあり、彼らとの時間に特別ささえ感じている。じゃあ、別に困っちゃいないじゃないかと言われそうであるが、私は彼らを通して起きている事態に、違和感もとい嫌悪感を抱いている。

その対象は、彼らではなく、彼らとコミュニケーションをとろうと試みもしない上司の態度である。今私が置かれているのは、本来、上司の立場である彼らが処理するはずの就労証明書の記載やスケジュール交渉について、私が外国人労働者の方達との中継人になっているという現状だ。先述した通り、私は異国の地から遥々やってきた彼らと接することは決して苦とは感じていない。だが、それをいいことに、彼らとのやり取りをこちらに全投げしてきて自分は彼らとは接触をしない、というスタイルを貫いている上司達に、少なからず不満を抱いている。

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「なんでいつも私に依頼するんですか?直接彼らとお話ししたらいいのに」一度、上司にこのように伝えたところ、「俺は無理だよ、英語とか喋れないし(笑)相手が何言ってるかも分からないし。表情もブスッとしててさ、何考えてるか分からないんだよ、あの人達」という答えが返ってきた。

なるほど、だから、彼らがシフトに入る時にはいつも私がいる時間帯にして、自分自身が働く時間帯には彼らのシフトを入れないのか。…なんだこの上司。自分が英語に自信がないからって、彼らとの関わりを避けるのか。ならなんで採用したんだ。ああそうか、自分の入らない時間帯にシフトを組み込めば良いと思ってたんだよな、既にその時から。ああ、なんて無責任な人…。「ブスッとした表情で」って、知り合いが一人もいない、言葉も通じない遠い場所にきているわけなんだから、そう易々と笑顔でいられるわけないだろう。不安でいっぱいで仕方がなく、つい顔が強ばってしまう、と、その程度の想像も出来ないのかあの上司は。全く、心の寂しい人だ。

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私は、外国人労働者の方たちが日本に増えていくに連れ、彼らが不当な扱いを受けてはいないかということに気持ちを遣ることがたまにある。目の前で起きていることだけでこの有り様だ。きっと、私の知り得ない、外国人の方々を取り巻く複雑な環境が、そこかしこの至るところに溢れているのだろう。そんな状況に置かれた彼らに対し、私が出来ることなんてほとんどありやしない。だがせめて、一緒の店で働く目の前の彼らには、私が少しでも彼らの力になることで、少しでも日本での居心地の良さを感じてもらえたらと思っている。

使う英単語は合っているか分からないけれど、文法はめちゃくちゃかもしれないけれど、ボディランゲージに笑顔を織り混ぜながら、少しでも、彼らと温かい時間を共有することが出来たらと考えながら、日々を過ごしている。