「かわいい」と言われているクラスの女の子が羨ましかった。高校を卒業するまで、私はそんなステキな言葉を掛けてもらったことなんてなかった。誰かに「かわいい」と言われたくて、自分を変えたくて、私はとにかく努力した。

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地元にいた頃は、他の子たちがこっそりマスカラやグロスなどを駆使して「かわいい」顔に仕上げている一方で、私は日焼け止めとリップクリームを塗っているだけだった。真面目な私は当時、彼女たちに対して「校則を破って、先生に怒られてまですることなの?」と呆れていた。でも、本当は「かわいい」自分になれている彼女たちのようになりたかった。

高校を卒業してから上京するまで、化粧品専門店のBAさんから教わった通りにメイクできるよう練習した。手先が不器用なので、上手くできるようになるまで時間がかかった。それでも、東京での生活が始まったときにはササッとメイクできるまでに上達した。メイク以外にも、ヘアスタイルやファッションなどを気にするようになり、周りから褒められるようになった。

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家族からの「かわいい」、友人からの「かわいい」、好きな人からの「かわいい」。他にも色んな人から言われている。「今までの努力のおかげかも」と純粋に嬉しい反面、「本当にそう思っているの?」と疑ってしまう。

きっとまだ、外見にコンプレックスがあるからかもしれない。小学校と中学校では、何もしていないのに「ブス」「キモイ」「死ね」といった心ない言葉をよく浴びせられていた。また、仲良くしていた子から裏切られたこともあった。そういったことがきっかけで、自分に自信が持てなくなり、人を簡単には信じられなくなってしまった。

母親が「かわいい」と言ってくれるのは、ただの親バカだと思う。世間的にはそうでなくても、自分の子だからそう言ってくれるのだろう。友人の場合は「(自分ほどではないけれど、または外見ではなく性格が)可愛い」という意味合いがあるのかもと思ってしまう。今までの恋人や近寄ってきた男たちが「かわいい」と言ってきたのは、みんな最初のうちだけ。好きな人ももしそうだったら、ただ悲しいだけでは済まないかもしれない。

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本当に褒めてくれている人もいるのかもしれないけれど、拗らせている私はなかなかみんなからの「かわいい」を簡単には受け入れられない。それに、ある人が言っていた。「『きれい』は本当に美人にだけだけど、『かわいい』はそうじゃない人にも使える」と。そんなことを聞いてしまったので、「かわいい」と言われるのが怖くなってしまった。

少し前に好きな人から「きれい」と言われた。そのときは謙遜してしまったけれど、内心はすごく嬉しかった。「かわいい」よりも、今の自分を肯定されている気がした。それでも「そんなに褒めてどうせ口だけでしょ?」と、相変わらず疑う癖が抜けない。「きれい」なのは外見?それとも内面?「どちらにも魅力を感じるなら、早く振り向いてよ!」と少し苛立ってしまう自分がいる。

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「かわいい」自分になりたくて頑張ってきた。それでも自信を持てないのは、内面を変える努力が足りなかったのかなと思う。私は普通にしていても「近寄りがたい」「表情が固い」と言われることがある。無意識のうちに、周りへの壁を作ってしまっているのかもしれない。内面も「かわいい」と言われるようになるために、少しずつ変わっていきたいと思う。